授業・調査の様子12 文化遺産デザイン研修8
京都府立総合資料館主催 寺子屋講座「京都の歴史を歩こう!2014 岡崎編」(2014.4 歴史学科 井上真美)
2014年3月23日、京都府立総合資料館と共同で開催した「京都の歴史を歩こう!2014 岡崎編」を行いま
した。この遠足ではAR(拡張現実)を取り入れ、それぞれの時代をより視覚的に捉えてもらえるよう学生が
中心となって企画しました。ARの作成自体も学生が行っていて、今回は「琵琶湖疏水」「法勝寺概要」
「考古学から見た法勝寺」「大礼記念京都大博覧会」の4つのARを作成しました。
遠足当日、学生は9時半に蹴上駅に集合。学生が名札・パンフレット・スケッチブック等の準備をしてい
る間に参加者の方々が集まり始めました。お名前を伺って名簿にチェックをし、それと並行してスマート
フォンやiPadをお持ちの方には、今回の遠足の目玉であるAR を見て頂くためにAR easyのダウンロードを
してもらいました。
10時過ぎに参加者の方が全員揃いました。まず資料館の方からご挨拶を戴き、次に上杉先生から一言をも
らい、学生がルートや遠足の概要等を軽く説明をしました。その後、今回は参加者の人数が多かった事も
あり、学生1人につき参加者3人というグループを組み、ルートを回っていきました。
・琵琶湖疏水・蹴上インクライン
参加者の方と自己紹介をしつつ日向大神宮を通り、第1・第2疏水の合流点が見える場所で担当の学生が疏水
の利用について解説をしました。特にここでは防火・生活用水の補給・運輸としての役割を説明しました。
説明の間写真を撮っている方もいらっしゃいました。
その後、蹴上インクラインを通りながら、疏水の建設工事責任者であり、その計画を書いた田邊朔郎の
銅像の前まで行き、そこで疏水に関するARを見ました。音声が聞こえづらい部分もあり、少し残念な所も
ありましたが、それでも興味深く見て下さる参加者の姿が多く見られました。
ARを見た後、「ねじりまんぽ」と呼ばれるトンネルの説明を加えながら、インクラインを下って行きました。
実際の高低差を感じてもらいつつ、その間に疏水の利用方法として水力発電の説明をしました。
「ねじりまんぽ」での説明
・法勝寺跡(現・京都市動物園)
南禅寺船溜まりに着き、そこで疏水関係のまとめをしてから、中世の岡崎についての解説をしました。
白河天皇に関する概説と法勝寺が建てられる前の岡崎に関する説明をした後、白河天皇が後に院政の執り
行う事になった法勝寺についてARを見てもらいました。今はなき法勝寺の姿を映像として見てもらった後、
その跡が今はどうなっているのかを仁王門通を参加者の方と歩きながら解説しました。法勝寺の中でも特
徴的な八角九重塔に関しては知っている方も多く、お話が弾む場面もありました。その高さが京都市動物
園にある観覧車の約7個分の高さだと説明すると、とても驚かれた表情をされていたのが印象的でした。
京都市立美術館の一角で集まり、昔、法勝寺の九体阿弥陀堂があったフラミンゴ舎が見える位置で法勝寺
の八角九重塔とそこに使われた瓦の説明をしました。伽藍図や八角九重塔の復元図、国名等はスケッチブ
ックにまとめて、参加者の方が判りやすいようにしました。同時にARで法勝寺の復元図や瓦を見てもらい
ました。
それら発見された遺物から、法勝寺に使われた技術や物は遼や高麗からの文化が関係していたのではない
かと考え、法勝寺に国際交流の一部が見えるのではないかと解説しました。それを受けて、近代では内国
勧業博覧会を始めとして様々な博覧会が行われ、その時代も又、国際交流の場ともなっていた岡崎につい
てお話ししました。
その後岡崎通を歩き、途中謎の遺構である「皇太子殿下御降誕記念」のお話をしました。どのような意図
をもって作られたのかが判然としていないこの遺構には、関心深く見ておられる参加者も多くいらっしゃ
いました。平安神宮までの間は、主に中世末期から近世にかけて、主に畑地として利用されていた岡崎の
説明をしました。
法勝寺跡での解説
・平安神宮
12時頃に平安神宮に到着しました。この時点でかなり時間が押してしまっている状況で、途中帰ってしま
われる方もいらっしゃいました。ここでは主に「平安遷都千百年紀念祭」についての解説をしました。
時間の関係上、本来解説する部分を省略した部分もあり、少しそれが心残りとなってしまいました。
平安神宮内にある神苑では昔、琵琶湖疏水の水が使われていた話をし、中を少し参拝してから大典記念京
都博覧会の遺構が残る場所へと向かいました。その間は主に時代祭について解説をしていました。
遺構は当時使われていた電燈の台座部分で、実際に触れてもらいました。そこで最後のARとなる大礼記念
京都大博覧会のARを見てもらいました。そこでBGMとして使われていた音楽に興味を持たれる方が多かっ
たです。
・鳥居〜竹中庵
有名な大鳥居に行く前に、道中に残る最勝寺跡の解説をしました。その跡神宮道を真っ直ぐに進み、京都
市立美術館にある表札に見える大礼記念の跡を見てもらいました。鳥居に関する説明をした後は、昔岡崎
に通っていた路面電車の話と共に娯楽施設「パラダイス」に関するお話をしました。特にパラダイスに関
しては分かっていない事も多かったため、とても会話が弾んでいました。
白川沿いに移動してからは、少し昔までそこがプールとして利用されていたお話をしました。参加者の方
には疏水で泳がれた事のある方もいらっしゃり、当時の疏水の様子を実際にお話に聞くことが出来ました。
竹中庵では今回特別に中を開けていただき、そこに残る水路を見せて頂きました。
その後は白川沿いを歩きながら感想等をお聞きしながら終着点である東山駅まで歩きました。駅に着いて
から、資料館の方と上杉先生からお話してもらい、参加者の方にアンケートをお願いしました。
13時頃に全行程を終え解散しました。
今回の遠足では、それぞれの時代の最新の技術を取り入れながら発展・変化していく岡崎の姿を実感して
いただくことが一番の目標でした。そのため、一つのポイントで違う時代の話を差しこみ、その繋がりを
感じてもらおうとしました。少しでもそういった点を参加者の方に感じて頂けたのであれば、幸いだと思
います。
学生は14時半から反省会を行いました。各自反省と感想を述べ、今後の活動について上杉先生からお話が
ありました。最後に担当の参加者の方にお礼状を書き、学生も解散しました。
昨年から約1年に亘り岡崎を調査してきましたが、参加者の方の感想等をお聞きしていると、その集大成
とも言えるような遠足が出来たのではないかと思いました。今後、ここで得た経験を生かしていきたいと
思います。