授業・調査の様子3

文化遺産デザイン研修(2012.1 歴史学科 西井綾乃)

歴史学科では、学生有志が参加する「文化遺産デザイン研修」が設置されています。
地域に存在する文化遺産を、地域の中でどのように活用するか考える(=デザインする)ことができるようになるための
スキルアップとして、各地域の実践例を学び、地域の文化遺産を調査し、その活用例を企画していくことを目的に、様々
な活動を行っています。

京都アスニー・京都市考古資料館・京都大学総合博物館・京都府立総合資料館といった地域の文化遺産を実際に活用する
施設の企画に参加し、活用の現場で学ぶことができるのも、文化遺産デザイン研修の大きな特色の一つです。

今回は、京都アスニーでの展示企画・展示作業の一部を文化遺産デザイン研修で行いました。


京都アスニー開館30周年記念 国際日本文化研究センター共同企画
古典の日記念 京都市平安京創生館 特別展
『京の地図学者 森幸安の世界』(全12回シリーズ 2011年4月〜2013年4月)



シリーズ第5回「日本地図大集合」〜日本地図を比較する〜
展示期間2011年12月23日(金)〜2012年2月20日(月)





大学院生と学部2回〜4回生の学生、合せて27人で、10月の初め頃から準備を開始しました。まず、江戸時代の地
図製作者である森幸安が描いた9枚の日本地図が上杉先生から提示され、それらを3つの展示ケースでどのように
展示するかみんなで意見を出し合いました。その結果、各ケース3枚の日本地図を割り当て、「幸安の業績」・「図と
書で描かれた世界」・「地図に歴史を描く」という3つのテーマを表現することになりました。






その後は3班にわかれ、担当のケースのテーマに
沿った展示を考えました。「壁に貼る日本地図以外
にどのような地図を展示するか」「限られた文字数
でどう解説するか」という課題について、週に1〜2
回、各班で空き時間や放課後に集まり意見を出し
合いました。各自で参考文献を読み、先生のアドバ
イスを受け、みんなで話し合いを重ね、地図のレイ
アウトや解説を考えていきました。

展示レイアウト案







「幸安の業績」を解説するために、長久保赤水や石
川流宣といった他の地図製作者の描いた日本地図
と比較する。

長久保赤水作 「改正日本輿地路程全図」








「図と書で描かれた地図」の「書」の部分に注目す
る。日本地図のまわりに書き込まれた識語の一部
を翻刻し、解説する。

「日本地体図」の識語解説








「地図に歴史を描く」ということから、森幸安が描い
た京都の地図「京師内外地図」を用いて、江戸時代
と現代の京都を比較するクイズを出す。
「京師内外地図」下半分

期日である11月30日までに各班でそれぞれ特色のある展示レイアウト案・解説案をまとめて、最後に全体で展示案
を確認しました。そこで他の班の案に意見を出し合って、展示レイアウトや解説を仕上げていきました。








約2ヵ月の準備を経て、12/20と12/21の2日間、参
加者それぞれの授業の空き時間を利用して実際の
展示作業に臨みました。第四回の展示物を撤去
し、展示ケース内の清掃をした後、今回展示する複
製の地図を壁面や床面に配置していきました。

壁面にはメインの日本地図を展示







展示作業は、事前に考えたレイアウト通りにはなら
ないことも多くありました。実際に地図を貼ってみ
て、配置してみなければ、それが本当に見やすい
展示であるかどうか判断できないことなど、多くを学
ぶことができたと思います。

床面に置く地図の準備








今回の展示で、紙の上で案を考えるだけで終わる
授業課題などとは異なり、自分たちの考えた展示
案が実際に形になる、ということを体験しました。活
用の現場で学ぶ、というデザイン研修の醍醐味を強
く実感できたように思います。

展示作業終了後