ようこそ動物機能学研究室へ!
当研究室では、食が動物の生理機能に与える効果とそのメカニズムを研究しています。特に注目する生体システムは、食によるホルモン・神経を介した食欲・代謝・精神機能調節で、このような新しい脳・末梢臓器連関システム(動物機能学)を明らかにすることで、科学的に示されていない食の新しい機能(食品機能学・栄養学・食理学: Dietology)を発見したいという想いで研究を展開しています。これら基礎研究の成果は、農業分野(農作物、産業動物)に貢献するだけでなく、ヒト・家畜動物・愛玩動物の健康に役立つ技術開発、そして、食と健康を繋ぐ医農連携分野に貢献することが期待されます。 進化し続けているライフサイエンス分野において、オリジナリティーある切り口で食と健康についてサイエンスをしている当研究室で一緒に研究をしたい方は大歓迎です。
*興味のある方は、「お問い合わせ先」からご連絡ください。
研究背景1:急激な環境変化で脳・全身機能が正常に調節できていないか?
人口爆発から少子高齢化への変容、食事変化、環境化学物質、24 時間社会、ストレス・過労など、我々を取り巻く環境はこの 1 世紀で大きく変化しています。この大きな環境変化に対応できず、摂食の異常(過食・
摂食リズム障害・食欲不振)、代謝の異常(肥満、メタボリックシンドローム、痩せ、冷え)、精神機能の異常(抑うつ)などの健康問題が増加しています。この問題の多くに脳機能が深く関与しています。脳は様々な生体機能を調節する統合中枢臓器であります。摂食抑制薬や抗うつ薬など既存の薬は、血液脳関門等いう脳のバリアを通過して脳へ直接作用して治療効果を発揮します。しかし、脳内へ侵入した薬は目的神経以外にも作用して副作用を誘導することも少なくはなく、副作用のない安全で有効な治療薬の開発が求められています。
研究背景2:第六感に関与するか?内受容感覚を司る「求心性迷走神経」の魅力
当研究室では、意識に上らない内臓感覚神経「求心性迷走神経」に着目した研究をしています。その理由は、求心性迷走神経は脳に選択的な情報を伝達して、副作用無しに上記の健康問題を解決できる可能性を秘めているからです。そして、これまでの我々の研究成果からも、食事内容や食事リズムが求心性迷走神経機能を変化させられる可能性が示されているからです。
脳は、血液から情報を受け取るだけでなく、内臓感覚神経による選択的な神経情報入力の影響も強く受けています。内臓(心臓などの循環器系、胃腸や肝臓や膵臓などの消化器系 etc.)の情報を脳へ伝達する重要な内臓感覚神経の1つが「求心性迷走神経」です。この求心性迷走神経による神経情報は、痛いや冷たいなどの意識に上ぼる情報ではなく、例えば,食事の後の満腹感や幸福感の創出、社会性の向上、食後の血糖上昇を正常値に戻す機能の発動、体温上昇による新陳代謝亢進作用などの食後生理作用に深く関与するかもしれないことが、当研究室の研究成果からも明らかになりつつあります。
当研究室の研究戦略
当研究室では、【1】どのような食品成分や食事方法、もしくは、食事と薬の組み合わせなどが求心性迷走神経活動を変化させているのか、【2】その神経活動変化が機能(摂食・代謝・精神)を調節しているのか、【3】機能調節における脳内神経伝達機序・脳と全身臓器の連関システムについて研究しています。そして、本システムに有効な食品成分や製剤を利用して、【4】過食・肥満・糖尿病、食欲不振・フレイル、冷え性、ストレスや気分障害などを予防/改善する手法の開発を目標としています。
この「食・脳・全身機能連関システム」が明らかになると、食物や食事が有する新たな有益機能が科学的に明らかになるだけでなく、病気の原因解明や、病気に対する新しい予防法や改善方法を開発することができます。さらには、このシステムをヒトや家畜動物、愛玩動物へ応用し、全ての動物に対した健康増進技術となりうるか、検証しています。
本研究では、生理学、神経科学(自律神経・中枢神経)、生化学・分子生物学、解剖・組織・病理学、食品栄養科学的手法を用いています。
研究活動を通じた教育(研究活動:答え無き事柄を明らかにする活動が、我々を成長させてくれる)
当研究室での最先端研究活動を通じて、探究心、課題発掘力、研究立案力、論理的思考力、問題解決能力、ディベート力、リーダーシップ、協調性と豊かな人間性の育成に全力を尽くしています。そして、食品や医薬品業界及び研究機関で活躍できる人材の養成を目指しています。
本研究に対する想い
本研究室教授の岩崎は、学部から博士課程までは「食品栄養科学」を専攻し、博士(食品栄養科学)であります。食物と食物成分を中心に健康に関わる研究をしてきました。学位取得後は、医学部生理学講座の職員として身体の仕組み:生理学を学び、研究を発展させてきました。なぜ生理学研究をしたかの理由は、「身体の仕組みを理解することが、食物の機能を理解することで大変重要」であるからです。食は人に良いと書きます。我々は生きるために食べています。ただ食べるのではなく、どのように食べることがWell-Being(健康・幸福)に繋がるのか、基礎学問としてきちんと理解したいという想いです。そのためには、農学・食品栄養科学と生理学との融合研究がとても重要です。これからの医農連携、もしくは、医福食農連携の発展のために、研究・教育活動に全力で取り組んでいます。
主に実施している「食・ホルモン・神経による摂食・代謝・精神機能研究」
・腸ホルモンGLP-1の分泌促進成分である希少糖アルロースなどの、過食・肥満・糖尿病改善作用
・香辛料成分による食欲不振改善、フレイル・サルコペニア改善作用
・食品成分や食後ホルモンの体熱産生と冷え性改善作用
などを実施しています。