修了生+卒業生>沼野周平



卒業研究(作品) うつりこみの庭/ガラスによる屋外空間の設計

設計趣旨
 普段、私たちの多くは即物的に物事を捉えているのではないだろうか。物体の間に存在する空間は忘れられがちなように思われる。本計画ではガラスへの映りこみによって混じりあう、風景の関係を意識する庭の設計を行い、忘れられがちである変化する空間を意識化し、新しい視点を得ることのできる場所を提案する。
 建築は固定的なものであるが、空間は本質的に変化するものである。空間は建築に関与する光や音、風、さらには私たちの動き、心理的変化によって流動的に変化する。建築はその空間の変化を呼び起こし、そして私たちは建築を通してその変化を意識する。私たちの多くは、物体と空間という密接な関係にある二つの要素の片方-物体しか、意識していないのではないだろうか。
 空間とは物体間の距離の総体とも言い換えられる。距離が意識される時、空間も意識されるのではないだろうか。風景がガラスに映りこむことによって、その風景はガラスの平面に捕らえられる。その平面には他の風景も映りこんでいく。一つの平面上で様々な風景が混じりあっていくことで、それらの風景の間のもともとの距離はなくなる。そこで、私たちは混じりあった風景同士の距離について意識しだすだろう。そのことが変化する空間を意識化することに繋がると考える。