修了生+卒業生>清水祐輔



修士研究(作品) 新しい工場建築/水を題材とした印刷工場の構想と設計

設計趣旨
 本研究は、近代以降の製造の発展と密接に関わってきた工場建築について生産活動の場としてのあり方と、社会的環境としてのあり方というふたつの視点をもつことが必要であると考え、産業を衰退させることなく建築計画として工場建築にどのような提案ができるかということ、また、生産のみを目的とする場としての工場ではなく、社会に溶け込んだ新しい工場建築の可能性を探ることを目的とし、具体的な計画設計案として提示した。
 本計画地がある加西市の風土や歴史に着目してみると、その気候や地理的条件から農業用水を確保する目的のため池が数多く存在している。それらは人工的に造られたものであるにもかかわらず、長い歴史のなかで多くの動植物が移り住み、人間による利用・管理と共存しながら独自の生態系を形成してきた背景がある。また敷地の北側には、河川が流れ、この土地は元来水質に恵まれ、また原料となる米が豊富に採れることなどから古くから酒造りが盛んであった。
 ①このような敷地の風土や歴史、環境的背景から導かれる要素としての水(風土としての水)、②さらに印刷工場で大量に使用される工業用水としての水(用としての水)、③紙や人の流れを形容する表現としての水(動線と表現としての水)、④また機械から出る油分・インク・洗浄液など一般的に汚いという印象がある印刷工場と、綺麗な水を必要とする清酒工場という、同じ工場でありながらその環境や性質が相反する施設として隣接する両者に共通する水(清さとしての水)などから、「水」を題材として計画の中で一体的に扱うことが有効であると判断した。
 さらに、敷地と印刷工場をめぐる分析のプロセスのなかから、各機能と社会の連結による「連続性」というキーワードを抽出した。それは、工場周辺地域との連続性と工場内における空間の連続性のふたつと捉えた。
 ここで行ってきた作業のプロセスは次の通りである。①調査、②分析、③1~2の結果をふまえて印刷工場の基本となるモデルを計画した。④敷地と印刷工場をめぐる分析のプロセスの中から導いた「水」と「連続性」を題材とした。⑤このふたつの題材をもとに、建築の形態や構成などを導いた。