<略歴>
1972年生

1999年3月 千葉大学大学院博士後期課程 自然科学研究科修了,博士(農学)

1999年4月〜2001年12月 日本学術振興会 特別研究員(PD)

2002年1月〜 京都府立大学農学部助教授

2007年4月〜 京都府立大学大学院
生命環境科学研究科准教授

2018年4月〜 京都府立大学大学院
生命環境科学研究科教授

2020年4月より現職
『高等植物ミトコンドリアの構造と進化』
Last updated Jul. 27, 2023

English version
細胞工学研究室
Plant Organelles Analysis Group
<オルガネラの由来とゲノム>

 我々ヒト含む動植物(真核生物)の細胞にはいくつかの細胞小器官(オルガネラ)が存在する。
 それらの中に
“ミトコンドリア”と呼ばれる呼吸を司る小器官がある。ミトコンドリアは、およそ20億年前に、細胞の中に細菌の一種が共生したものだと言われている(図1)。しかし、「共生後どのように進化して現在のような形になったのか」ということに関しては、まだあまりはっきりと解明されていない。
 加えて、植物の細胞には葉緑体があり、それぞれ核のDNAとは別に、独自のDNA(オルガネラゲノム)が存在する。ミトコンドリアゲノムと葉緑体ゲノムは、核のそれと比較すると多くの点が異なる。



 一般に葉緑体ゲノムが120-190 kbの単一環状分子で構造が比較的よく保存されているのに対して、ミトコンドリアゲノムは生物種間で非常に大きな差がある。
 ヒトなど動物のミトコンドリアは17 kbほどの小さなDNAであるが、下等植物のコケ(ゼニゴケ)では180 kb、高等植物では200 kb以上のサイズがある(図2)。

 植物ミトコンドリアのゲノムは、一般に多くの反復配列を持ち、それらを介した相同組換えによって様々な構造や大きさを持つ分子が存在すると考えられているが、詳細はまだ解明されていない。




<RNAエディティング(RNA編集)>

 植物オルガネラの遺伝子では、RNAの転写後に遺伝情報の編集が起こる図3A)。
これは“RNAエディティング”と呼ばれ、特に高等植物のミトコンドリアで頻繁に見られる現象である。エディティングによって特定のシトシン(C)の塩基がウラシル(U)に変化し、多くの場合で対応するアミノ酸に変化が生じる(図3B)。














<核ゲノムへの遺伝子の転移>


 ミトコンドリアゲノム・葉緑体ゲノムに存在する遺伝子は必要な遺伝子の一部である。その他の大部分の遺伝子は核に存在し、細胞質で翻訳された後にタンパク質の形で"輸入される"。タンパク質には、「配達の荷札」に相当する
“プレシークエンス”と呼ばれる配列があり、ミトコンドリアへ正しく輸送される(図4)。


 このような核の遺伝子の多くは、「かつてミトコンドリアや葉緑体に存在していたが、進化の過程で核ゲノムへ転移した」ものであると考えられている。しかし、その詳細はほとんど謎のままである。




 以上のように植物のミトコンドリアには、他の生物種にはないユニークな点が多く存在する。これまでに以下のようなテーマについて特に研究を行っている。

@ ミトコンドリア遺伝子の構造比較

A ミトコンドリアの遺伝子転移、特にプレシークエンスの進化的由来と獲得のメカニズム

B RNAエディティングの制御機構


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ミトコンドリアのタンパク質輸送シグナル(プレシークエンス)と緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合遺伝子を導入したタバコ
培養細胞の蛍光顕微鏡像

導入した遺伝子産物の局在は、GFPからの蛍光(緑色)と染色されたミトコンドリア(赤色)の像が重なって黄色に見えている
(東京大学大学院農学生命科学研究科植物分子遺伝学研究室と(独)農業生物資源研究所遺伝子多様研究チームとの共同研究による

 

 く ぼ    なかお
久保 中央


京都府立大学大学院
生命環境科学研究科
教授
(併任:生物資源研究センター
基礎研究部 部長)


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