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土壌化学/生命分析化学研究室:研究内容
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1.日本の農耕地土壌における各種元素の形態別定量とその規定要因の解明

土壌の各種元素の形態別存在量を網羅的に解析しその元素組成を明らかにすることは、土壌の肥沃度評価はもちろん、重金属等有害元素の挙動を理解できる点で土壌の健全性評価としても大切であり、ひろく「土壌の質(Soil Quality)」の評価であると考えられます。そこで本研究室では、日本全国から採取した農耕地土壌180点を用いて、各種元素の形態別定量評価を進めています。この研究は、日本における食料生産・環境保全の基礎情報となるとともに、岩石や河川水との対比により日本の陸域環境における物質循環を理解する上でも役立つものと考えています。さらに、アジアの農耕地土壌の広域評価の結果と合わせて、日本の農耕地土壌のアジアにおける位置付けを目指しています。

        

     (左::形態別窒素量、中:地域別全セレン量、右:全ホウ素の吸光光度定量


2.土壌における放射性セシウムの吸着挙動の解明

セシウムは、土壌中に存在する粘土鉱物の一種である雲母類(イライト様鉱物)に強く固定されます。雲母類の層末端開裂によって生じる、フレイド・エッジと呼ばれる場所がその固定に寄与するためです。ただし、日本のどの土壌に雲母が多く存在するのか、どの程度開裂した雲母類がもっともセシウムを固定しやすいか、などは良く分かっていない状態です。そこで、日本の様々な種類の土壌について、雲母類の存在量や開裂の程度、そしてフレイド・エッジへのセシウムの吸着を阻害するAlポリマーの影響などを調べることで、放射性セシウムの移動性を規定する鉱物学的な要因の解明を目指しています。また、日本の黒ボク土の放射性セシウム吸着能と関連して、日本の土壌の鉱物性に及ぼす風成塵の影響についても調べています。

        

 
  
  
(左:雲母類の風化とフレイド・エッジ、中:粘土のK含量とRIP、右:土壌酸性化と粘土の構造)


3.アジア・アフリカにおける土壌粘土の特性評価

アジア・アフリカの貧栄養な土壌において、土壌粘土が養分を蓄える機能を理解することが、農地での適切な施肥管理につながります。ファラルソルなどの強風化土壌に豊富に存在する鉄酸化物は高いリン酸固定機能を持ちますが、その機能は鉄酸化物の種類や腐植の付着量、構造へのアルミニウム置換率等の影響で変化します。環境的背景の異なるフェラルソルに含まれる鉄酸化物の構造や表面の化学性を解析し、それらの特性とリン固定機能との関係を明らかにすることで、フェラルソルでのリンの有効利用の可能性を探っていきたいと考えています

       

 
    (左:粘土構造内のAl、中:熱帯土壌の断面と鉄酸化物、右:粘土鉱物同定用のX線回折装置)


4.土壌の肥沃度評価と養分供給機構の解明

土壌から植物への養分供給は、土壌の生産機能の基盤であり、自然植生や食料生産を支えています。本研究室では、その基礎となる土壌肥沃度の評価法の改良や土壌の養分供給機構の解明、さらには根圏・根域・圃場スケールでの変異を考慮した合理的土壌管理法の提示を目指した研究を進めています。
またこれと関連して、土壌の可給態窒素の給源に関する研究や、黒ボク土における難溶性リン酸の可給化、さらには下水汚泥炭化物の土壌改良資材としての機能性評価に関する研究にも取り組んでいます。


           

 
    (左:根圏土壌の様子、中:根域の肥培管理と植物生育、右:圃場内の収量の空間変異)


5.熱帯農業生態系における各種元素の動態解明と持続性評価

熱帯土壌は一般に養分・有機物に乏しく生産性が低いと言われています。しかし熱帯の多くの地域では、このような土壌に依存した農業が行われています。本研究室では、タイやインドネシア、カメルーンなどを調査地に設定し、熱帯農業生態系を物質循環の視点から捉え、その持続的管理を目指した研究を進めています。

         

     (左:キャッサバ生育調査、中:熱帯土壌、右:有機物連用区のサトウキビ:いずれも東北タイ

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