ご挨拶
教授 田中和博
バーチャル植物園を目指して
『見て知りそ、知りてな見そ』。民藝運動を起こした思想家、柳宗悦の言葉です。見てから知りなさい、知ってから見てはいけません、という意味です。この言葉が意味することは、植物観察にも当てはまります。植物の様子をじっくり観察し、実際にどうなっているのか、どのような特徴があるのかなど、体験していくことが重要です。
さて、京都府立大学は、隣接する京都府立植物園と互いに連携・協力して、これまでも様々な取り組みをしてきました。それは植物のことをもっとよく知っていただくために、実施してきたものです。植物園では、生きている状態の植物を実際に観察することができます。それはそれで大変有意義な体験ですが、その時の季節の様子しか観察できないのが残念なところです。たとえば、秋に実がなっているのを見つけたら、その花はいつ頃咲き、どんな様子だったのだろうと好奇心が芽生えてきます。そこで植物園を利用して研究をしている京都府立大学の教員有志が集まり、理科教育を通した地域貢献活動の一環として、『バーチャル植物園』を立ち上げようということになりました。
『バーチャル植物園』であれば、季節に関係なく、時空間の制約を受けることなく、植物の様子を比較したりすることができます。植物の生活史は植物だけで成り立っているのではありません。花粉を運んでくれる虫や種子を散布してくれる鳥の存在も重要です。『バーチャル植物園』では、虫や鳥の世界との関係性も含めた植物の世界を表現することができます。植物を「もの」として観察するだけではなく、植物とその植物の周りで起こっている「こと」も含めて観察するための教材として、『バーチャル植物園』を立ち上げたいと考えています。
平成28年度は、京都府公立大学法人の地域関連課題等研究支援費の助成を受けて『府立植物園との連携による自然史系環境情報の収集・発信・普及啓発及び環境教育を推進するための基礎的研究』の研究の一環として、『京都府立大学府立植物園連携プロジェクト バーチャル植物園』を立ち上げることができました。今後、植物に関する様々な研究成果を追加し、より充実したホームページにしていくとともに、よりリアルな『バーチャル植物園』の構築に向けて取り組んでいきたいと願っております。皆様のご支援をお願い申し上げます。