修了生+卒業生>陳驍



卒業研究(作品) 中国北京における建築の歴史の重なりを尊重した設計

設計趣旨
 80年代の後半からの経済改革によって、中国は急激な発展を遂げ、大量のファストビルディングが建てられた。特に大都市ではかつてない大規模の建築活動が行われた。都市を破壊し、大量コピー建築物を建設した。そして、2000年代に入り、外国建築家が国家プロジェクトを手がけ、多くの作品が作られた。レム・コール ハースの中国中央テレビ新本社ビルや、ザハ・ハディッドの北京・銀河SOHOなど、ジェネリックシティ化建築は街中によく見られる。このような中、国家の威信をかけた北京オリンピックにおいて中国人建築家ではなく海外の建築家が多く起用されたことも、建築にナショナリズムを求めない中国建築の現代的な状況を最も象徴する出来事と言えるだろう。 凄まじい都市開発とアイデンティティ不在の都市化で、人々の中国伝統建築への関心が希薄化していく。同時に、何千年もかけて形成した中国の町の個性が失われていく。
 近年、経済成長に集中していた中国政府が伝統建築の保全や、街並みの整備に注力し始めた。2005年1月12日に公表した「北京城市総体規劃(2004年-2020年)」に、一点集中している北京の主要機能を周辺地域に転移する上、旧市街区域の風貌を保全し、世界的な歴史文化の町を築くと指示した。また、敷地が位置する東城区は全国的な伝統文化の中心として位置付けられた。特に明、清時代に形成した北京特有の“胡同-四合院”の伝統建築形態を保護し、景観に影響のある建築行為を禁止すると明記した。又この地域は伝統文化の中心として、建築文化だけではなく、水墨画や景泰藍のような伝統芸術文化も保全するうえで、現代に生かせる役割があると考えた。この為、自由に創作し、展示できる場所が必要である。しかし、現状では北京における芸術施設が少なく、特に中心部には、郊外の798工場芸術区のような施設が稀である。
 以上のことをふまえて本研究では、ジェネリックな建築に対し、モダニズムを意識した現代建築でありながら、周辺地域の建築形態を尊重したうえで、中国固有の歴史や文化性を想起させる芸術施設の具体的な計画案とデザインを提示することが目的である。本設計では、北京旧市街にある四合院の建築の特徴を保留しつつ、中国伝統建築の複雑な細部をシンプル化し、簡潔、明快な現代建築を設計する。