設計趣旨
近代建築において、フランク・ロイド・ライトやミース・ファン・デル・ローエは、各室を壁で分節しながらも、完全に区切ることなく、建築の内部をひとつながりの空間として捉える「流動的な空間」の考えを示した。現代において、この流動的な空間の考えは、外部と内部のつながりも含めてさらに発展している。 本研究では、この方向性を軸とし、「流れ」を主題とする建築空間を提示することを目的とする。
計画地は京都市右京区京北周山町、右京区役所京北出張所周辺である。京都市街地から南丹市や福井県小浜市への中間地点に位置する。林業がさかんであるため森林が多く、計画地である周山町は山に挟まれた盆地である。列車によるアクセスはなく、車やバイク等のドライブの休憩地として利用する旅行者が多い。そこでこの土地が単に中継地点ではなく、観光等の目的地となるような建築を計画する。メインストリートは周山道路と呼ばれる、2007年にバイパス工事が完了した比較的新しい道路である。多くの利用者を見込むため、バイパスの周囲を今回の敷地とする。
旅行者や周辺住人のためのパビリオン空間を計画する。ドライブの休憩地として利用される広場や、通学や買い物などで使用される道路や段差、斜面等に5点の建築を配置する。利用者が建築物を通して非日常的な空間体験をするようなパビリオンを計画する。全体の用途としては体験型の美術館とし、各建築に固有の機能を持たせる。本研究では飛び出す絵本に使われている手法で建築空間を設計した。ここではこの手法を「折り込む」と表現する。そのパターンやスパンを変化させ、全体として5点の建築で構成している。敷地の面積や傾斜などの特徴を生かし、各建築物にバリエーションを持たせている。