修了生+卒業生>萩原萌



卒業研究(作品) 森のパヴィリオン/建築・自然・人の関係から空間を考える

設計趣旨
 現代を生きる私たちは、様々な移動手段を手に入れ、長距離の移動も短時間で可能になった。移動に時間をかけることなく場所から場所へいかに速く移動できるか、その目的を達成するために技術が発達した。その分、自分の足で移動することが少なくなったように感じる。その結果、出会っていたはずのモノたちを高速で飛び越え、自分と周囲の関係が分からなくなる場合がある。難しいことが簡単になり、簡単なことが難しくなった。そのように感じ、もう一度自己の足で移動することの大切さ、そこから生まれる出会いや体験がかけがえのないものであるという事を再認識したい。
 そこで本研究では、自然の中で自らが移動し、移ろいゆく自然を感じながら身体的体験をする中で、自己の身体性を取り戻してゆくことを主題とした空間を、遊歩道とパヴィリオンの具体的な計画案として提示することを目的とする。
 本計画では、自己を取り囲む空間の再認識を促し、身体性を取り戻すことを主題とする。その足掛かりとして、7つのパヴィリオンとそれらをつなぐ歩道の計画を行い、回遊型の自然遊歩道を計画する。自らが移動することで、見える景色、変化する空間を自然の中で体感し、五感を通して空間を認識できる場を提案したい。 なお、ここでの移動には器具を使わず、歩きながら回遊することを条件とする。
 敷地は京都市と亀岡市の間を流れる保津峡に設定する。保津峡は蛇行する川によって作られた渓谷であり、自然の厳しさと美しさを有する。 古くから材木や物資の輸送ルートとしても活用され、京の都を支える要所としても広く親しまれてきた。現在では四季折々の変化を楽しむために、川下りやトロッコ列車の運行なども行われ、遊歩道や自然道が整備されている。その自然の美しさやアクセスのしやすさなどから、年間を通じて多くの観光客や登山客を集めている。その一部にそれぞれのパヴィリオンを配置し、必要に応じて歩道を増設した。