設計趣旨
近年、都市において空間に対する人の主体性が失われつつあるのではないだろうか。効率性や利便性を重視して作られた現代の都市空間はサービスのための空間や移動のための空間という機能的な場が多くを占めている。また、建物や街路など個々の機能が完結して存在しており、人の能動的行為を受け入れる空間やきっかけが少ないように感じる。そのため、都市における空間への主体性を回復するきっかけとして、人の能動的行為を受け入れるふるまいの余地を作ることが重要であると考える。能動的行為の代表である遊びに着目する。近年、遊びをキーワードに都市への関わりを考える取り組みが見られており、 遊びという行為は子どもよりむしろ大人にとって必要なものとして再評価され始めている。また、遊びに用いられる遊具は遊びを助長するだけでなく、場との繋がりも生まれていると感じ、都市における空間への主体性を考える際、公園における遊具のように能動的行為と空間に呼応するようなきっかけとしてふるまいの余地を持つ装置が必要であると考える。以上を踏まえ、本研究では遊びという行為の特性に着目し、遊びと遊具の考察・分析を通して、建築に遊びの要素を取り入れることで、都市における人の主体性を回復するきっかけとなるような建築のあり方を提示することを目的とする。