設計趣旨
これまで建築空間における透明性は、コーリン・ロウの分類によって「実」の透明性(第一の透明性)と「虚」の透明性(第二の透明性)に2分されていた。「実」の透明性はガラス等の透明な素材を使った空間において見られる物質的な透明性である。「虚」の透明性は空間的に異次元にあるものが同時に知覚できることを指し、異次元にあるものを同様に捉えようとした際、一方の存在が透明となっていることに着目した知覚的透明性である。
2000年以降、異次元にある空間に同じ素材を用いることで、体験的に物理的な距離を透明にする建築や、反射率の高い素材を外壁に用いることで建築物の存在を透明化した建築が見出されるようになる。
本研究では、2000年以降に見受けられる透明性を体験的な透明性(第三の透明性)と定義した上で、物質的・知覚的・体験的と3つに分類される透明性を調和させた空間の計画を目的とする。透明性は2つ以上ある空間の間において議論されるものであり、空間の広がりや周辺環境との関係性に影響を及ぼす。本研究を通して、地域と関連の強い建築種において、透明性を調和した建築が環境に対する建築の新たな在り方・建築に対する新しい人の流れを生むと考える。