修了生+卒業生>木村淳子



修士研究(作品) うつろいの空間/境界による継起性を主題とする複合施設の設計

設計趣旨
 今日の都市における建築物は、水平の広がりに限界を迎え、垂直方向へと向かい高密度・高層化している。大規模化した建築の外形はほとんど認識されず、外部と内部の境界としての個々の建築のファサードの機能は崩壊しつつある。また、スラブの積層により構成される多くの建築物は、各階で完結し内側からも外部との境界がはっきりと認識できず、空間としての多様性を失っているといえる。また、携帯電話やインターネットなどの仮想空間は、場所や身体とは無関係に成立している。  このように場所や身体のもつ意味が希薄化し、人々の受動的行為を促してしまう均質な空間が広がる中で、境界に着目し、能動的に体感する空間を提示することは、わたしたちの身体感覚を呼び起こし、固有な魅力ある空間や場の獲得に通じるものであり、意義があると考える。  本研究は、ある空間から別の空間に移行する際の空間同士を規定する境界および継起性を主題として、特に建築を構成する要素の中の「壁」と「開口」の扱いに着目し、人々が能動的に体感できる「うつろいの空間」という視点から、具体的な複合施設の計画・設計案として提示し、新しい計画・設計手法を導くことを目的とする。