修了生+卒業生>小島諒



卒業研究(作品) 体感する建築/五感で自然感じる美術館の設計

設計趣旨
 人は古来より自然とともに暮らしてきた。日本人は木や土などの自然素材で家を建て、土間や縁側を設け、外と内を緩やかにつなぎ、その境界が曖昧な空間で生活してきた。屋内であっても風を感じ、季節をその肌で感じられるような空間で常に身近に自然を感じ暮らしてきたのである。
 しかし現代においてはどうだろうか。いつしか自然と人の生活は全く別のものとして考えられるようになった。人々は都市に集まり、そこでは地面はアスファルトやコンクリートで綺麗に整備され、その土地が本来持っていた地形は無視されている。建物はコンクリートで固く閉ざされ、空も建物の間から見える程度で小さく切り取られている。内に閉ざされた建物が多く見られ、自然と人の生活が完全に隔てられてしまったように感じる。その中で生活している私たちは、季節の移り変わりにも鈍感で、その土地が持つ性質や形状などにも無頓着になり、自分たちが自然の中で暮らしているということも忘れてしまっているのではないだろうか。
 以上のことを踏まえ、本研究では、自然を身近に感じられる空間の中で、今一度現代の生活を見つめ直し、改めて人と自然が共生するための適度な距離について考えるきっかけとなる建築の計画案を提示することを目的とする。その土地の形、空気、生き物などその場に存在するものを感じ、そこから生まれる感覚や感情に目を向け、五感に訴えかけることができるような建築としたい。