設計趣旨
私たちは無意識のうちに風から感覚を刺激されている。視覚や聴覚による情報と同様に、風は私たち人間の感情と密接な関係がある。特に日本人は他の国の人々より風の影響を受けてきた。その1番の理由として四季があるということである。日本では風を、そよ風、すきま風、潮風、木枯らしなど、強弱だけでなく季節や場所によって呼び方を変える。さらに、風流、風景、風情など、人の心を動かす意味でも風という言葉が使われる。
しかし、現在多くの建築は、風などの自然から切り離し、人間が快適で過ごしやすい空間を生みだしている。例えば、暑いと感じれば冷房をつけ、寒いと感じれば暖房をつける、などといった人工環境が当然のように存在している。自然は人間を必要としないが、人間は自然を必要とする。自然を基盤として生活していた人間が、今は生活を利便化するために自然を破壊している。それを踏まえ、これから豊かな生活をおくるには自然とうまく関わりあい、自然の恩恵を受け、自然の下で生きているということを認識しなければならないと考える。
以上を踏まえ、本研究では、普段当たり前に存在する自然現象である風を、建築を通して違った角度からみつめ人々の五感や感性を刺激する空間を内包し、自然と一体化した建築を計画することを目的とする。