設計趣旨
建築によって自然と人をつなぐ新しい環境をつくれないだろうか。今の私たちがもつ感性で、建築でもあり、自然でもある、何か新しい空間として捉えられるようなもの。
現在、情報技術の発達により、世界はより複雑に著しく変化し続けている。インターネットやスマートフォンの普及によって私たちは膨大な量の情報と知識を容易く入手できるようになった。そしてまた私たちはこの変化に合わせ、生活様式、考え方や価値観を多様化させてきた。物事をより自由な発想で捉え、思考することができるようになったといえるだろう。
また建築においても、これまでの自然の脅威から人を守るためのシェルターとしての役割から、これからは自然と人を繋ぐための新たな建築の可能性について考えるべきではないだろうか。石上純也は、建築をシェルターとしてではなく私たちをとりまく環境として捉え、その間をゆるやかに繋ぐために構築される空間として考えた。この新しい環境こそがこれからの自由な建築のあり方であると述べている。
以上のことを踏まえて、本研究では自然と人を繋ぐための新たな空間として、「木漏れ日」を主題とした遊び場空間を、風で「ゆれる」構造体によって創出することを目的とする。私たちの柔軟な感性を持って、自然に対する新たな認識を生むと共に、これからの建築の可能性について考えるきっかけになればと考える。
本計画では、自然光がもたらす魅力のひとつである木漏れ日の効果を取り入れた建築空間の設計を行う。木漏れ日は太陽の光に照らされた木々から落ちる光であり、葉の重なりが美しい影を創りだす。風などによって動いてゆらぎ、豊かな表情をみせる。この木漏れ日の特徴を捉え、建築自体が風などの力によって揺れて動くものを考えた。従来の建築の堅固で不動であるというイメージとは異なった新しい空間を目指す。