設計趣旨
ひとつの形を構成するいくつかの要素を、明確に認識させるために「分節」は存在する。建築空間において、分節は壁面・床面によるものや、機能によって 予め設定される室名であり、その分節によって、ひとつの空間を構成する 小空間を明確に認識させている。しかし、明確に認識させるが故に、その空間は融通性の乏しい、固定された空間になりがちである。
固定された空間は、その空間のみならず、その空間内の人間の行動さえも固定化(一定化)し、空間における体験を変化の乏しいものにしているのではないだろうか。
外郭寸法7500×7500×7500㎜に設定したひとつの形から生み出されたこの6つの空間は、人間の知覚や認識、また建築や空間を構成する幾何学の基本的要素に一定の法則を加えることによって変化する、曖昧且つ自由な分節をもつ空間である。
外郭形状は一定に温存され、立方体という形態が完全・完結的であることを表す。一方、空間における分節を曖昧で自由にすることで、内部空間は非完結的であり、それによって、空間を固定化から解放し、融通性と多様な変化を与え、空間の機能や内における体験に無限の広がりの可能性を持たせている。
大きな空間から自由で解放された空間をつくり出すことは容易であると考え、本計画では固定されがちな小さな空間を融通性をもたせることで解放に導くこと、また、大きな空間に繋ぐ、部分的建築を試みようと考えた。
これは空間の構成や変化を使い手に委ね、様々な分節の固定から解放された空間の創造を目的とした、建築の部分的観点からの空間提示のひとつである。