設計趣旨
わたしたちにとって水は身近な存在だが、決してつかむことのできない、不思議で魅力的な存在である。軽やかで、柔軟で、にぎやかで、美しい水の豊かな潜在能力を、重くて、固くて、静かな建築という存在に取り込むことができれば、新たな心地よい空間が生まれるのではないだろうか。
本計画では浴場を主な用途とする建築物とその周囲に広がる空間を設計し、具体的な計画案として提示した。斜面に積層しながら配置されたハコ型の建築の表層や内部を、水が流れ伝い落ちてゆくことにより、水という新たな空間構成要素によって曖昧でにゆるやかに定義された豊かな空間が生まれる。水をまとった建築は、まわりの景色や風、光に呼応しながら刻一刻とその表情を変え、自然の中に溶け込むだろう。