修了生+卒業生>坂根遼



修士研究(作品) 大規模木造建築における新しい架構表現による建築空間

設計趣旨
 近年、木造建築に注目が集まっている。その注目は、戸建住宅のみならず、大規模建築にも及んでいる。日本の木造建築の歴史は古く、現存する最古の事例として知られる法隆寺をはじめ、社寺、仏閣、城郭等の大規模建築が古くから木造で建てられてきた。明治維新後の廃仏毀釈などの排斥運動を受けながらも、木造建築は日本の建築文化を象徴するものとして熟成し継承されてきた。このような歴史的、文化的価値としての木造建築が存続する一方で、近代以降の一般的な用途の建築物について考えた場合、木造は耐火性・耐震性において鉄筋コンクリート造や鉄骨造に比べ遥かに劣るという理由から、公共建築に採用されることは難しく、戸建住宅等小規模の建築物に限定される時期が長く続くこととなった。しかしその後の技術革新を経て、1987年以降の建築基準法改正により、木造建築物の高さ制限が緩和され、耐火建築物として認可される等、木造建築の適用範囲が広がり、さらに集成材やLVL等の新しい木質構造材料が積極的に使われ始めたことから、近年では規模や用途ともに多様な木造建築が提案されるようになってきている。特に在来構法よりも大きいスパンの架構注をもつ木造建築(以下大規模木造建築とする)においては、一時期研究が途絶えたが、構造計算の高度化や新材料・新技術の発展にともない、従来の日本の伝統的な木造建築には見られない新しい架構が提案されている例えば、木材と鋼材を組み合わせたハイブリッド構造によるものや異なる架構の複合によるもの等が挙げられる。木造建築において架構は、建物の構造としての骨組みであるとともに、それが目に見える「現し」の状態である場合には、架構の形やそれを組み立てる視覚的に強調された構成材による意匠的な表現としても捉えることができる。特に大規模木造建築の架構の表現について考えた場合、架構のスケールが大きいことから、戸建住宅よりもさらに、架構の表現が建物の内部空間あるいは外部空間を特徴づける重要な要素であると考えられる。以上のことを踏まえ、本研究では、近年の大規模木造建築事例について文献調査を行い、そこから得られる架構と表現についての知見をもとに、木造建築の新しい設計手法を計画案として提示することを目的とする。建築構造分野における木造架構の既往研究は多くあるが、その蓄積を前提としながらも、本研究は、木造架構によってこそ得られる構造美や空間的効果と、採光や空間構成など他の要素との折り合いを考えながら、建築空間の意匠設計の手法として全体的な均衡の中で木造建築を捉えるところに特徴があり、この計画案を通して、豊かな建築空間の創出に供したいと考える。