修了生+卒業生>関谷駿



卒業研究(作品) 分解の建築/空間を巡り本と出会う図書館の設計

設計趣旨
 人間をはじめ、この世の万物は、目に見えない微粒な粒子や細胞で構成されている。もちろん建築材料となるものもすべて我々と同じ微粒子の集合体だと考えられる。つまり建築自体が使用者である我々と同じ構成原理であるといえるのではないか。ボリュームを分解することにより、建築の視覚的な印象は変化し、新しい行動範囲、感覚が創成される。建築が自然と人間を媒介するものとなり、両者を繋ぐきっかけになると考える。 隈研吾は『プロソミュージアム・リサーチセンター』で、細い木の棒を基本とした千鳥格子のシステムを拡大し、組み上げた立体グリッドを、建築を支える構造体とし、厚みのあるボリュームを構成した。約3mの壁厚で囲まれた空間は有機的で、やわらかく暖かい雰囲気を与えている。ヘルツォーク&ド・ムーロンの『ヴィトラハウス』は、妻部を家型に整形したボリュームを積み重ねたデザインである。ランダムな積み上げられ方が自然を想起させるものであるのに対し、家型のフォルムが人工物であることを主張し、安定でありかつ不安定な二律背反の印象を我々に与える。以上のような事例を参考にし、本研究では分解と再構築という過程を経て、自然と人工物、中間的な建築を再考する。固定されたボリュームの中に動線を配置するのではなく、建築物自体が人間の行動範囲を抑制し、別の空間へと誘う役割を持たせる。移動を意識化させることで、新しい感覚を想起させてくれる。用途としては人間の動線を三次元的に展開させ、人が館内を巡って本と出会う図書館を計画する。