修了生+卒業生>島田涼



卒業研究(作品) 暮らしの余地 

設計趣旨
 千里ニュータウン(以下NTとする)は高度経済成長期の都市への人口集中の解決策として開発された。開発当時の日本のまちづくりの先駆的な手法として「近隣住区論」を採用し構成された。近隣住区ごとに公園、小学生、幼稚園等の公共施設や近隣センター等の公共公益施設と住宅地が徒歩圏に配置され、地区センターがいくつかの近隣住区ごとにつくられた。1962年のまちびらきから、大きく成長してきた一方で、社会環境の変化や住民ニーズの多様化が進むとともに、人口の減少、少子・高齢化の進行、住宅や施設の老朽化等、様々な課題が見られるようになった。特に千里NTでは開発当初に多く入居した若い核家族が転居することなく住み続けた結果世代の偏りが大きくなっていた。このような中、2007年に「千里NT再生指針」が策定された。この指針に基づき、公的賃貸住宅の建て替えや地区センターの再整備をはじめ、NT再生に向けた取り組みが進められてきた1)。 現在NT全体で開発当初に建設された集合住宅の建て替え・改修が進んでいる。近隣住区論に基づく豊かな屋外空間を目指しゆとりのある配置計画によって開発された集合住宅を、高層・高密度化し余剰地を民間デベロッパーに売却して建設費用を調達している。その場所を「NTの団地空間」たらしめた建て替え前の、雑多だがひとの暮らしの垣間見える屋外空間は、3Dパースのようなきれいだが生活感の感じられない場所へと変わった。そこで本計画では周辺の高層・高密度化した集合住宅のアンチテーゼとして中層の建て替え計画案を提示することを目的とする。