修了生+卒業生>曽我成美



卒業研究(作品) 山と湖のメディアライブラリー

設計趣旨
 意図のない場所。機能主義に真っ向から対立する、特定の機能をもたない場所。これを、藤本壮介はSpace of no intention と呼ぶ。決められた目的を持たないがゆえに、人に活動を選択する自由を与えるような場所である。行動を制限する意図はないがゆえに、人々のアクティビティの多様性のきっかけに満ちている。
 古来、日本の家屋や町にはSpace of no intentionと呼ぶべき居場所が溢れ、人々のアクティビティと密接に関係していたと考えられる。軒下、縁側、店先、路地、裏庭、どこか懐かしさを覚えるこれらの居場所はSpace of no intentionと位置付けられ、かつての地域コミュニティ形成を助長する役割を担っていた。
ところが近代の細分化プロセスによって、空間に“私有”と“共有”の明確な境界が与えられる。厳格な線引き制度による整然とした区画整理が実現したと同時にSpace of no intentionそのものと、そこに存在したコミュニティの冗長性は失われた。
 本研究では、このSpace of no intentionを内部と外部の中間領域と定義する。ここでの中間領域とは、本来内部と外部のあいだに位置していた明確な隔たりや境界という概念を逸脱し、内部から外部もしくは外部から内部へと空間のシークエンスを生み出すものと考える。本計画は、近代のプロセスに対応しながらも、かつ中間領域の役割を発現可能な空間を、建築的手法として計画することを目的とする。