設計趣旨
人々の集合的記憶の風化は早い。記憶は歴史的時間の流れの中で風化してしまうのである。戦後71年の今日は実際に経験した戦争の記憶が遥か遠くなり、若者への記憶の継承の問題が中心的課題になりつつある。
戦争体験者は年々減少し当時の状況を伝える力が弱まるとともに、戦争があったことを実感できる手がかりはさらに失われていくことが予測される。
つまり人々の集合的記憶は歴史的時間の流れの中で弱体化し、非戦争体験者という「他者」は時間の経過によっていずれ記憶をすべて忘却してしまうかも知れない。「その後生まれてくる時間軸上の他者はある種の当事者としてこの経験を繋げていかなくてはならない」とする観点から、人々が戦争を繰り返さないためには記憶を継承し続ける必要があり、過去の負の記憶に触れることが、豊かな未来への布石になるものと考える。
広島に残る砲台跡地を対象に、記憶の継承と未来の創生を軸として、負の戦争遺産としての意味を後世に継承するとともに、日常的に利用できる市民の憩いの場としての環境を整備するための具体的な計画案を提示する。