修了生+卒業生>田中靖子



修士研究(論文)京丹後市袖志地区における水と暮らし

設計趣旨
 かつて水を用いる場、すなわち水場は生きていくために必要な飲み水、洗濯などの生活用水、農耕のための水を確保する場であり、ある時は物資を運ぶ交通網、またある時は漁撈の場、遊びの場にもなった。非常時の防災に使われることもあれば、日常生活を豊かにする水辺を作り出すこともある。「飲料には早朝の澄み切った流れを汲み、洗ひ物にも次々の順序をきめて、下流に住む人の迷惑にならぬやうな、不文の約束が守られて居た。」と柳田が述べるように、生活に密着した水は集団社会にルールをもたらし、それを共有することで社会的秩序が保たれていた。今日、自然やコミュニティの崩壊が騒がれる中で、改めて水と人との生活を見直す時が来たのではなかろうか。現在、全国の2000を越す地域で過疎化・高齢化が進み、共同体として機能維持が難しくなっている中で、固有の生活文化が消えつつある。本研究では、京丹後市袖志(ソデシ)地区を取り上げ、生活における水利用を明らかにすると共に、シミズ、カワ、イケ、イネと呼ばれる水資源を対象に、役割・機能と、空間的特徴・構成、意味としての場という側面からそれら水場の関係性を明らかにしていく。