修了生+卒業生>梅原拓海



修士研究(作品) 空間を編集する/人と場をつなぐ複合用途の建築設計手法

設計趣旨
近代以降、都市などのコンテクストに限らず、豊かな自然環境の中であっても、機能性や利便性、経済性を重視した周辺の地勢や環境、文化などと関わりをもたない要素によって風景が更新されてきた。このような風景の中で、場所の固有な魅力を発見し体験することは難しく、人の場に対する意識は薄れつつあると考える。 人は知覚に心的・身体的経験が伴うとき、その固有の場所性に強い関心を向け、その土地や環境との関係を意識することができると考える。人の経験的知覚は、建築と場の境界を透明にし、シームレスな関係性によってつなぐことができるのではないだろうか。建築史家コーリン・ロウ(1920-1999)は論文「透明性―実と虚―」において、建物の構成による概念的な透明性として「虚」の透明性を定義し、身体経験によって得られる知覚的透明性の可能性について言及している。身体経験を伴うシークエンスは、建築の透明性を確保し、外部環境との調和を図る手段として有効であると考えられる。つまり、土地に対する新たな介入においては、場所に対して様々なものが無関係に別々に存在するのではなく、元々の地勢や環境と関係をもった建築の介入によって、場全体の豊かさにつながっていくと考えられる。 本研究では、人と場をつなぐことを主題とし、「空間を編集する」手法を用いて、人の身体感覚に着目した地勢や環境との一体的なシークエンスをもつ複合用途の計画・設計案として提示し、新しい建築設計手法を導くことを目的とする。