修了生+卒業生>漆戸航



卒業研究(作品) 静越の空間

設計趣旨
 現代が情報化社会と言われて久しい。昨今、新たな携帯情報デヴァイスやそれに付随する多様なサービスの登場により、更新され続ける情報のポータビリゼイションが進んでいる。そうした中、人間の生活の中の場所性と時間性が変質、ないし消失していることが強く感じられる。SNSや電子書籍、ネットストアなどに見られるように、かつて建築・都市を含む物理空間によって担われていた機能は電子空間によって代替される。物理空間における身体的な体験は希薄化し、そこで行われていた様々な事象が電子空間へと流失し消費されてしまう。人々にとっての空間は手の内のスマートフォンに収斂し、時間性と場所性は等閑視される。こういった現状が種々の現代社会病理の一因となっているのではないかと考える。 そこで建築の存在価値を、物理現象として人々の想像力に働きかけ、情動をもたらすといったところに見出す。 人々の意識を再び物理的な現象へと引き戻す契機とすることに、建築の意義と将来性を感じる。 建築空間から電子空間で代替可能な機能を剥ぎとったときに残るもの、それと人が向きあうことを可能とする建築の提示を目的とする。