設計趣旨
日本は国土の約70%が森林に覆われた森林大国である。しかしながら、ひとたび日本の森林に目を向けると、約40%は人の手による維持管理が必要不可欠な人工林となっているにもかかわらず、その多くは充分に手入れが行き届かないまま荒廃しているのが現状である。次世代に豊かな森林資源を残すためには、年々蓄積量の増加する人工林から木を伐り、使用し、そして新たな木を植え、適正な森林管理のサイクルを取り戻すことが急務の課題である。この対策として、林野庁は2009年に森林・林業再生プランを公表、木材自給率50%の低炭素社会実現を目指す方針が示された。さらに2010年には、公共建築物等木材利用促進法が制定され、今後木造建築への需要が高まり、都市の中に多くの木の空間が現れることは明白である。
よって本研究では、国産材利活用の活性化および公共建築の木造化に対して建築意匠の分野からアプローチするために、木の良さを引き出す手法について考察し、木の良さを生かした空間を創出できる新たな木造建築の設計手法を導く。さらに、導いた手法を用いて、特定の地域において具体的な計画案として施設を設計し、木の良さを理解してもらえる公共空間の一つのモデルを提示することを目的とする。