設計趣旨
建築の表層のあり方について、表面、透過、奥行という観点から、建築が本来持つ内的空間とその周辺にひろがる外的空間とがより一体的に連携して環境を形成していくことを目的とした、七つの建築群からなる彫刻美術館である。
建物の構成要素は全て150㎜角の木の集成材である。それぞれの建物は格子状に組まれた壁面とスラブ面によって構成されている。角材の集合によって形成される壁面には、ガラスなどをはめることはせずに隙間は隙間として残されている。建物全体はその外側はもとより、内側も風や雨を受ける空間となっており、年月を経て、木の素材が変色し古色を伴うように意図している。これら七つの建築群がおかれる敷地は、適度に光の射し込む雑木林を想定しており、重なり合う木立の間をぬうように抜けていくと、建物群が木々の間から徐々に姿をあらわす。季節ごとにそれぞれ違った表情を見せる木立の中で、この建物もまた同じ呼吸を繰り返しながら、表情を変化させていく。ここに展示される彫刻作品はすべて常設のものとする。年月を経ることで、建物とともに作品もまた変化していくことを意図している。
ある一点に立ってこれら七つの建物群を目の高さで見通したときには、一つの建物の壁面を構成する格子ごしにその奥の格子が見え、外部空間をいったん挟んで、さらに向こうの棟の壁面の格子、さらにその奥には雑木林の木立が見え隠れする、そのような垂直にたつ線上の部材の集密により、周辺環境と建物が一体となった、一つの表面であり、透過し、奥行のある空間を形成することを意図している。さらにその空間は、見る者が移動することにより、格子の隙間を透過して見える奥行が刻々と変化していく。つまり、固定的な建築物と、その周辺の木立という自然そしてその環境に介入する人間の、三つの関係が表面、透過、奥行という効果を通して一体化することを意図しているのである。