研究内容
TOF-ERDAによる薄膜分析技術の開発
試料に高速のイオンをぶつけると、試料に含まれる原子が弾き飛ばされます。この弾き飛ばされた原子(反跳原子)を測定することによって試料内の どの深さにどのような元素が含まれているかを知ることができます。このように、試料にイオンを照射して放出される反跳原子を測定することによって 元素分析、深さ分析を行う手法を弾性反跳粒子検出(ERDA)法といいます。当研究室では、飛行時間(TOF)法を用いて反跳原子を精密測定することによって、 深さ分解能に優れて複数の元素を同時に分析できるTOF-ERDA法の開発を行っています。これによって電子デバイス等に用いられる厚さが数nmから数十nmの 薄膜を評価する技術を確立することを目指しています。
固体内低エネルギー核反応の研究
原子核反応を起こすには,原子核同士が重なり合うくらいまで近づかなければなりません。原子核の大きさは原子の10万分の1程度と原子に比べて非常に小さいため, 原子核反応に原子が影響することは通常はありません。近年,低エネルギー(数十keV)における核融合反応では固体中において反応率が増大するなど通常の核反応では 見られない様々な現象が生じることがわかってきました。これは核融合反応が原子,あるいはもっと大きなスケールでのまわりの環境に影響されるためと考えられます。 私たちの研究室では重水素核融合反応における新規現象の発見とそのメカニズムの解明を目指して研究を行っています。
PIXE法を用いた茶葉のアルミニウム分析
標的原子に高速のイオンを当てると、原子の内殻の電子がはじき飛ばされる現象 (内殻電離)が起きることがあります。内側にできた孔を埋めるために外側 の電子 が落ち込みますが、その時に原子特有のX線を放出します。このX線のエネルギー と個数を正確に数えることで標的内にわずかに含まれる微量元素をppbからppmの 桁で測ることができます。これをPIXE(「ピクシー」と読む。Proton Induced X-ray Emissionの略)法といいます。 この方法を使って茶葉の微量元素分布測定を行い、 茶が植物毒であるアルミニウムを無毒化するメカニズムの解明を目指しています。