research

研究紹介

 

私たちは、植物細胞のオルガネラ間コミュニケーションの実体を明らかにするために、葉緑体やミトコンドリアCa2+シグナルの発生機構とその生理的意義の研究を進めています(Research1)。また、葉緑体遺伝子発現制御の分子機構を解明することも重要な研究目標です(Research2)。更に、葉緑体ゲノムを操作する葉緑体形質転換技術の開発も行っています(Research3)。分子生物学,分子遺伝学的研究に加え、細胞イメージングや電気生理学研究などにも取り組んでいます。また,植物分子生物学研究の技術を利用し、資源樹木であるカカオとウルシノキの研究も行っています(Research4)。

Research1:オルガネラレトログレードシグナル

 

私たちは、葉緑体チラコイド膜に局在するCa2+結合タンパク質CASが、気孔閉鎖やPAMPが誘導するサリチル酸合成経路の活性化に関わることを見いだしました.これらの発見を基礎に、葉緑体Ca2+シグナルの発生機構と,下流のシグナル伝達機構、CASの分子機構などの研究に取り組んでいます。CAS依存のレトログレードシグナルは,感染防御遺伝子ばかりでなく、細胞壁関係遺伝子を制御している可能性があります。CAS依存レトログレードシグナルを介して,葉緑体が植物細胞機能を統御する全体像に迫りたいと思います。

fig3

 

fig4

更に,葉緑体同士を連結する構造体ストロミュールの誘導機構についても研究しています。 ミトコンドリアCa2+は、アポトーシス制御で需要なシグナルとなることが動物細胞でよく知られています。植物細胞でもストレス依存的なミトコンドリアCa2+シグナルが生じます.ミトコンドリアCa2+輸送体として、Ca2+ユニポーターMCA/MICU1系に注目し機能解析を進めています.また,機械受容チャネルMSL1がミトコンドリア内膜に存在することを明らかにしており,その機能解明も重要なテーマです。

                

参考文献
Nomura, H. and Shiina, T. (2014) Calcium signaling in plant endosymbiotic organelles: mechanism and role in physiology. Mol. Plant 7, 1094-1104

            

Research2:葉緑体転写機構

 

細胞内共生したシアノバクテリアを起源とする葉緑体は、原核生物型のRNAポリメラーゼ(PEP)と,ミトコンドリア由来のファージ型RNAポリメラーゼ(NEP)からなるユニークな転写システムを有しています。また、葉緑体は未熟なプロトプラストから発達し、根の白色体や花や果実のクロモプラスとなど,多彩な形態に分化します。葉緑体コードの遺伝子発現は、その文化に伴いダイナミックに変化します。さらに、環境変化や病原体の感染などのストレスによっても制御されています。私達は、この制御にシグマ因子や様々な転写制御因子が関わることを明らかにしてきました。RNAseqやChIPアッセイなどを駆使し,その分子機構の解析を進めています。

fig5

参考文献
Yagi, Y and Shiina, T. (2014) Recent advances in the study of chloroplast gene expression and its evolution. Front. in Plant Sci. 5, 61

Research3:葉緑体形質転換技術

 

私たちは、「葉緑体形質転換技術」を使い,葉緑体ゲノムを操作する研究も行っています。パーティクルガンで葉緑体へ導入した遺伝子は、葉緑体の相同組換え活性により,ゲノム上の任意の位置に挿入できます。また、葉緑体DNAは1細胞に数千から1万コピーも存在するため、導入した遺伝子は総タンパク質野10%を超える高発現が期待されます。実際、私たちの研究室では超耐熱性セルラーゼを、葉緑体で大量生産することに成功しています。セルラーゼは総可溶性タンパク質の25%以上蓄積し、乾燥葉中で安定的に保存できることもできました。他にも、葉緑体形質転換技術を使ったユニークな研究に取り組んでいます。

fig6

参考文献
Nakahira Y, et al. (2013) Overproduction of hyperthermostable β-1,4-endoglucanase from the archaeon Pyrococcus horikoshii by tobacco chloroplast engineering. Biosci Biotechnol Biochem. 77, 2140-3

Research4:有用樹木の分子生物学

 

分子生物学技術を産業樹木に応用する研究にも取り組んでいます。対象にしているのは、チョコレートの原料となるカカオと、日本の伝統工芸や建造物に使われる漆を採るウルシノキです。カカオの研究は、インドネシアのタジュラコ大学との共同研究で、DNAマーカー技術を使い、病害虫耐性の高い地域品種の開発を進めています。ウルシノキの研究は、京都府福知山市夜久野町のNPO法人丹波漆、(独法)京都市産業技術研究所との共同研究を行っています。RNAseqにより6000余りの遺伝子を取得するとともに、日本各地のウルシノキを区別するDNAマーカーを開発しました。日本の伝統工芸と分子生物学のコラボを進めています。他に、遺伝子組換え農業の評価の研究なども行っています。

fig7

参考文献
椎名隆、石崎陽子(2015)“遺伝子組換え農業の可能性と課題“ 農業は、面白い!  栗田治編 第5巻 pp1-114

Copyright (C) All Rights Reserved.