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第23回洛北史学会大会
【趣旨説明】
大会テーマ:「歴史学におけるデータベースの活用と課題」
近年のテクノロジーの発達により、家に居ながらにして多くの歴史的な史料・文書にアクセスすることが可能となった。通常では行きにくい遠方の史料館や文書館、博物館や美術館に収められている貴重な史料を容易に見ることのできるこのシステムは、近年世界的に流行するウイルスの影響もあり、ますます研究者のみならず一般の人々の間にも浸透し、今後も活用されていくことが予想される。本大会ではこうした歴史史料をオンラインで見ることが出来るデータベース、あるいはデジタルアーカイブについて、その経過と影響力、そして今後どのように活用されていくべきなのかについて考える場としたい。
歴史史料への容易なアクセスは、一部の人のみが閲覧することが可能だった史料に多くの人の閲覧が可能になることで、その分野の研究を急速に押し上げることが可能になる。一方で、オンラインでアクセスできる史料のみが使われ続けると、研究に偏りが生じる可能性も大いにあり得るのである。また一部史料や文化財・美術品の現物から分かるデータなど、オンラインではアクセスできない情報をどのように活用するべきなのかは課題として残るだろう。こうした研究手法そのものの革新性の一方で史料の利用の仕方、あるいは、その弊害については、必ずしも十分に議論されているとは言い難い。こうした点を議論することにより、歴史学におけるデータベース、あるいはデジタルアーカイブを用いることによる研究をより有用に、かつ陥りやすい問題を理解することが可能になるだろう。
上記の問題関心に基づき、本大会では三本の報告を用意した。野村朋弘氏の報告ではデータベースの開発・改修に携わった立場からのデータベースの可能性について。
宮崎幹子氏の報告では、「美術史と写真」及び「文化財の記述とデータベース」について。
福島幸宏氏の報告では近年の動向に触れた上で歴史学の変革の可能性についてパブリックヒストリーや研究者倫理の視点も踏まえてそれぞれご報告をお願いしている。いずれの報告もデータベース・デジタルアーカイブを中心にしたものだが、史料別の扱い方、また総合的な今後の発展といった点について展望をすることが可能であり、よりよい歴史学の将来のために活発な議論が行われることを期待したい。
歴史学に限らず、近年のデジタル化の発達は凄まじいものがある。しかし、一方で利用する側の知識やリテラシーが追いつかないことも珍しくない。本大会を通じて、データベース・デジタルアーカイブに求められるものはなにか、また起こり得る問題とその対処について学問的に共有し、未曾有の事態に研究が停滞することが無いようにしていくことが大事であると考える。
(文責:洛北史学会大会企画委員会)
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