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私たちの研究室では木材の主要成分であるセルロース、ヘミセルロース、リグニンやその関連物質が受ける様々な化学反応のメカニズムの解析を、有機化学や計算化学を駆使して行っています。
現在世界中で研究が進行している木質バイオマスの化学変換法の中には、そこに含まれる化学反応機構に関する知見が不足しているものが多くあります。一方で、そのような欠けたピースの一つとしての反応機構が解明されれば、既存プロセスの改良や新規プロセスの開発がより効率的に進められることは明白です。このように人間社会での木材の利用という観点から、反応機構に関する学術的研究の果たす役割は大きいといえます。
そして何より、自身のあらゆる知識と知恵を駆使しながら進める化学反応機構の解明研究は、非常に高度な知的創造活動です。化学反応はナノスケールよりもっと小さな世界で進行します。そのような非常に小さな世界に「生きる」原子や分子は、野球ボールやビー玉などのマクロな世界の粒子とは全く違った法則に支配されており、私たち人間から見ると非常に奇妙で面白いふるまいをします。あらゆる物質の構成要素である原子や分子が、人間の直観に反するふるまいをするというのは非常に興味深い事実ですが、なぜ自然がそうなっているのかは誰もその答えを知りません。
自然の仕組みを理解するという観点から、地上の生物重量の9割を占める木質成分が受ける化学反応に関する知見を収集することは、様々な自然現象を正しくとらえる上でとても重要といえるでしょう。