研究テーマ(武田)

花弁が曲がって咲く変化アサガオ「台咲」の原因解明

日本の伝統園芸植物であるアサガオは葉や花が様々に変化することが知られており、総じて変化朝顔と呼ばれています。その中のひとつに、花びらが曲がって咲いてしまう「台咲」という変異体があります。花びらが曲がってしまうことで、花の中央に台のような構造ができてしまいます。この原因を調べたところ、台咲系統では、がく片と花冠表面にある分泌腺毛がうまく形成されず、花器官どうしの摩擦が生じて、力学的に花弁が曲がってしまうことが分かってきました。「花びらがまっすぐ伸びる」という当たり前のような現象が、実は植物の積極的なメカニズムによって高度に制御されていることが分かってきました。

台咲変異の花


虫こぶの遺伝子発現解析と形態多様性に関する研究

虫こぶは、昆虫などが植物に作る特殊な器官です。虫こぶの中には、内側は食料となる細胞、外側はシェルターになって中の昆虫を保護するように分化するものがあり、昆虫が植物の発生プログラムを操作して、自分に都合の良い組織を作っていることが伺えます。この「昆虫による植物操作能」を、遺伝子、細胞、生理学的に明らかにする研究を進めています。

ヨモギの葉に作られる虫こぶ(ヨモギハエボシフシ)

サギソウの花弁形態解析と系統解析

野生ランの1種であるサギソウは、1枚の花弁(唇弁)が特殊化し、白鷺が飛んでいるような形になります。なぜ、どうやってこのような形の花弁ができるのかを調べています。また、サギソウは准絶滅危惧種であることから、その保全活動も進めています。

サギソウの花

花弁のイニシエーションに関わる転写因子の機能解明

花弁のイニシエーション(初期発生)に関わる転写因子の機能を、シロイヌナズナを使って調べています。写真は花弁原基の数細胞で発現する転写因子RBEを、蛍光タンパク質GFPを使って可視化したものです。このように「遺伝子の発現」を目で見えるようにしたり、遺伝子の機能を自由に操作することにより、花が一定の形を作り上げる仕組みを研究しています。

花弁原基で発現するRBE

農作物栽培と食用昆虫による「環境循環型アグリシステム」構築 

昨今の地球・社会環境から、日本の農業は新しい局面、すなわち環境への負荷が極めて少ない、持続可能なシステムへと移行していかなくてはなりません。農薬や化学肥料を使わない「自然栽培」の科学エビデンスや、農業残渣で飼育可能な食用昆虫、これらを組み合わせた「環境循環型アグリシステム」の構築を目指した研究を始めています。