木質バイオマスの有効利用
木材は様々な用途で使われますが、丈夫で腐りにくく、使い勝手のよい木材が求められます。そのような用途では、天然林にある希少な木材が使われることが多くあります。一度伐採された天然林の再生は大変困難です。 一方、人工林からの木材は腐りやすいなど、使い勝手が悪いために伐採されず放置され、荒廃が進んでいます。このような現状を改善し、天然林も人工林も健全な状態を保ちながら木質資源を有効に利用した持続可能な社会を形成することが重要です。当研究室ではオガクズなどの未利用木質バイオマスから有用な化合物を生成し、その成分を原料として人工林からの木材を処理し、天然林からの木材と同等の性能を有する改質木材を作る研究を行っています。作られた改質木材は、化石資源由来成分を含まない100%自然素材です。この改質木材を我々が暮らしている都市部で利用することで、人工林の健全な持続、天然林の保護、都市と森林の共生、自然素材の活用、持続可能な社会・都市、脱炭素化社会、地域の経済の活性化などが期待できます。
イオン液体処理による木質バイオマスからの有用化合物生成
イオン液体は、塩であるにもかかわらず常温付近で液体であり、溶解力に優れ、揮発性が極めて低いため、有害なガスを発生しない。このような特性を活かしたイオン液体の反応溶媒としての利用が、近年注目されている。当研究室では、イオン液体反応系にて、木質バイオマスの構成成分であるセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンを効果的に化学変換し、有用なバイオ燃料やバイオ材料の創製を行っている。
その他に、リグニンからのバニリン生成がある。バニリンは香料や医薬品の中間体などとして世界中で広く利用されている。しかしながら、現在生産されるバニリンは主に化石資源由来であり、リグニン由来のバニリンはほとんど生産されていない。そこで、当研究室ではリグニンからの選択的なバニリン生成を目的とした研究を行っている。
<関連文献>
- Toru Kanbayashi, Hisashi Miyafuji (2014) Raman microscopic analysis of wood after treatment with the ionic liquid, 1-ethyl-3-methylimidazolium chloride, Holzforschung, 69(3),pp 273-279.
- Emiko Ohno, Hisashi Miyafuji (2014) Production of disaccharides from glucose by treatment with an ionic liquid, 1-ethyl-3-methylimidozolium chloride, Journal of Wood Science, 61(2), pp 165-170.