研究概要
陸上には、熱帯から寒帯までの植生帯に応じて様々な生物群集(バイオーム)が形成されています。さらに、地形や地質、人為の影響などによって特徴的な植生が形成され、このような植生を取り巻く環境要因は様々に変化しています。森林植生学研究室では、様々な環境変動に対して持続的に森林や自然を保全・管理し、人と自然の共存を可能にすることを目的に、森林の構造解析といった群集・個体群生態学的な手法や、花粉分析などの古生態学な手法を用いて、森林動態、人と自然の相互関係史、植生史などに関する教育・研究を行っています。
研究テーマ
都市近郊二次林における遷移進行が種多様性に及ぼす影響
我が国の都市近郊に広がる森林の多くは、かつて薪炭林等として利用された二次林となっていますが、燃料革命以降その多くが放置され、遷移が進行しています。暖温帯域では、こうした遷移の進行に伴い、アカマツ・コナラを中心とする林から、シイ・カシが優占する常緑広葉樹林への以降が認められます。
京都市市街地では、こうした遷移の進行に伴い常緑広葉樹であるシイの分布が急速に拡大してきています。京都市東山において、空中写真の解析によりシイの樹冠面積を経年的に調べた結果、1961年から2005年にかけてシイの樹冠面積が約5倍となっていることが明らかとなりました(奥田ら2007)。現在は、シイが分布拡大中である京都市市街地北部の宝ヶ池丘陵に調査区を設け、現地での調査からシイが実際どのように分布を広げていくのか、シイが拡大することで他の植物にどのような影響があるのかということを調べています。
(写真は調査地のある宝ヶ池丘陵地林山の様子。斜面下の緑の濃い部分がシイ。)
京都市市街地では、こうした遷移の進行に伴い常緑広葉樹であるシイの分布が急速に拡大してきています。京都市東山において、空中写真の解析によりシイの樹冠面積を経年的に調べた結果、1961年から2005年にかけてシイの樹冠面積が約5倍となっていることが明らかとなりました(奥田ら2007)。現在は、シイが分布拡大中である京都市市街地北部の宝ヶ池丘陵に調査区を設け、現地での調査からシイが実際どのように分布を広げていくのか、シイが拡大することで他の植物にどのような影響があるのかということを調べています。
(写真は調査地のある宝ヶ池丘陵地林山の様子。斜面下の緑の濃い部分がシイ。)
冷・暖温帯植生移行域における種多様性維持機構の解明
京都府は、太平洋型と日本海型の気候区が接しており、南部から北部に向けて暖かい植物が生育する暖温帯植生から、雪の影響を強く受けた植物が生育するブナや天然スギ(アシウスギ)を中心とした冷温帯植生への移行がみられます。京都府中部には標高1000m弱の山域が広がっていますが、そこは冷・暖温帯植生の移行域に当たっており、標高や地形などに応じてさまざまな種類の植物が生育し、種多様性が高いことが特徴となっています。
しかしながら、この植生帯移行域にあたる地域は、今後の地球温暖化によって積雪量の大幅な減少が予測されている地域でもあり、多様な植物の維持、特に積雪環境に適応して生活している種の存続に大きな影響があると考えられます。
私たちの研究室では、こうした植生帯移行域に存在する個々の植物について繁殖、定着、成長、死亡がどのようにおこっているのかということを実際に現地に行って調査し、生物的・非生物的環境要因との関連性を解析することによって多様な生物が維持される仕組みを解明しようとしています。これによって、今後の環境変動によって植物がどうなっていくのかということも予測していきたいと思っています
(写真は、冷温帯スギ・ブナ林の紅葉の頃の様子)
しかしながら、この植生帯移行域にあたる地域は、今後の地球温暖化によって積雪量の大幅な減少が予測されている地域でもあり、多様な植物の維持、特に積雪環境に適応して生活している種の存続に大きな影響があると考えられます。
私たちの研究室では、こうした植生帯移行域に存在する個々の植物について繁殖、定着、成長、死亡がどのようにおこっているのかということを実際に現地に行って調査し、生物的・非生物的環境要因との関連性を解析することによって多様な生物が維持される仕組みを解明しようとしています。これによって、今後の環境変動によって植物がどうなっていくのかということも予測していきたいと思っています
(写真は、冷温帯スギ・ブナ林の紅葉の頃の様子)
東アジアにおける気候変動および人間活動と植生変遷の関係
陸上には、熱帯から寒帯までの気候帯に応じて様々な生物群系(バイオーム)が形成されています。また、人類が出現した時代である第四紀には、温暖な間氷期と寒冷な氷期を繰り返してきました。このような気候変動と植生変遷との関係とその歴史を知ることは、現在の植生の自然史のなかでの位置づけを理解する上で極めて重要です。さらに、このような知識は、現在の自然の状態を正しく理解し、将来の環境変化による植生変化を予測するためにも欠かせないものです。この観点から、日本列島を含む北東アジア、シベリアの温帯域から亜寒帯にかけての植生史を、各地から採取した堆積物花粉分析などの植生史学(古生態学)的研究手法によって解明しようとしています。さらに、現在に近い時代については、絵図、空中写真などを用いて、植生景観がどのように変化しているかを解明しようとしています。
植生と環境形成に及ぼした野火の影響
日本列島は、地球上の同緯度の温帯域の中でも飛び抜けて多雨な地域であるため、北米やオーストラリアの内陸部などと比べると、現在における火事の頻度も規模も大きくありません。しかし、近年の古生態学的な研究によって、日本列島でも過去約1万年間には火事が多発していたことが明らかになってきました。堆積物の微粒炭分析(火事によって発生した微小な炭が堆積したもの量を調べる)を行った結果、琵琶湖や丹波山地など広い範囲で1万年前から7000年前にかけて、火事が頻発していることが明らかとなっています。この時期は落葉広葉樹の拡大期となっていますが、火と関係してカシワやクリの増加も認められています。また、後氷期後期になると、琵琶湖東岸の低地帯では、約3000年前から微粒炭量が増加し、森林に覆われていない立地にイネ科花粉が増加して、約2500年前からは稲作が始まったことが示されました。約1000年前になると、地点によって詳細な年代は異なるものの、近畿地方の各地で、微粒炭の増加と共に植生が大きく変化し、マツや陽樹の落葉広葉樹が増加し二次林化していました。この植生の変化と共に、多くの地点で、栽培植物であるソバ属の花粉が出現することから、焼畑によって森林が破壊されソバ栽培が行われていたと考えられます。このように、現在の植生の成立過程には大きく火が関わっていることがわかってきました。このような火と植生との歴史を解明する研究を進めています。
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