ごみ有料化に関する情報・文献を紹介しています。ごみ有料化について概説するとともに、2005年に中央環境審議会から出された意見具申についての解説、山川がこれまでに書いたごみ有料化に関する文献レビューなどの紹介、その他、ごみ有料化に関する文献レビューや書籍、特集などの紹介もしています。ごみ有料化に関するリンク集も作成しています。 ごみ有料化に関する記事の目次 |
ごみ有料化とは、ごみ処理費用の一部または全部を,ごみの排出者が税金とは別にごみ処理手数料として負担する制度を導入することを言います。単に有料化と言うこともあれば、ごみ処理有料化、ごみ収集有料化等とも言われます。基本的には同じものです。私は、有料化は有料制を導入することで、有料制という名詞が、上記のような制度の名称と考えて使い分けるようにしていますが、必ずしもそのように使い分けられていない場合もあります。なお、手数料の有無に関係なく有料指定袋制を有料制に含める場合もあります。
有料制は大きく従量制と定額制に分けられます。従量制とはごみの排出量に応じて手数料額が異なる制度のことをいい、一定枚数の指定袋等を無料で配り、それ以上は有料とする超過量方式(一定量無料制)という方式も、広い意味ではこちらに含められることがあります。一方、定額制とは排出量に関係なく一人あたりや世帯あたり等の手数料額が一定の制度のことをいいます。現在、単に有料化、という場合には、従量制有料化を指す場合が多いと思います。
従量制の手数料徴収方法には、指定袋価格に手数料を上乗せする方法、手数料の証紙としてシール等を販売する方法などがあります。海外では、指定の容器があって、容器サイズや収集頻度で契約料金が異なる方法もあります。
1990年代以降、ごみ減量等を目的として家庭系ごみの従量制有料化が拡がっており、2000年代以降、さらに急速に増加しています。有料化を実施した自治体では、ほとんどの場合、有料化直後に収集量の減少が見られますが,その後は横ばいまたは微増の自治体が多い傾向にあります。しかし有料化しなかった場合と比較すればごみ量は通常は少ない傾向にあります。
なお、現在も学会においては、有料化のごみ減量効果に関する研究が続いていますが、1990年代後半から2000年頃の導入自治体については、ダイオキシン問題に伴う自家焼却抑制の影響が見られる可能性があり、分析結果の解釈には注意が必要です。
有料化を導入するとなると、常に懸念されるのが、不法投棄や自家焼却の増加です。確かに有料化導入後に不法投棄が問題になった自治体は少なくありませんが、有料化後に不法投棄が問題となっている自治体では従来から問題となっていた場合が多いことにも留意する必要があります。いわゆる不法投棄よりも、ごみステーションへの不適正排出が問題になることが多いようです。
一方,負担の公平化も有料化の目的としてしばしば挙げられています。確かに、租税による負担は集団的に見れば排出者が負担していることになっているものの、各個人においては排出量と負担との間に直接的な関係がないため、不公平という側面があります。その点、従量制有料化を実施すれば、ごみを出した人が出した量に応じて負担することになり、より公平な負担になると考えられます。
なお、循環型社会の形成に向けて、拡大生産者責任をさらに適用していくことが重要だと考えられますが、その場合には、一次的には、ごみ処理費用やリサイクル費用を生産者が支払うことが求められます。その場合、税とごみ処理料金と生産者支払いとの間で、どのように分担されることが望ましいのかについて考える必要があります。この点は、製品の性質などにより異なるだろうと考えられます。
負担との関係では、有料化は税の二重取りであるため問題があるとする意見があります。しかしながら、税と手数料の2つの手段で費用を徴収することが問題であるというわけではないと考えられます。ここで問題とすべきは、負担増か否か、ということと、負担増の場合には、そのお金の使途はどうなっているのか、ということでしょう。「二重取り」という表現には騙し取ったようなニュアンスがありますが、その意味するところについてはよく考える必要があると思います。
有料化の目的のひとつが財源調達であれば、負担増は自治体が公に宣言していることになります。その場合には、その使途を含めて、十分な合意形成が必要だと思われます。一方、目的が減量化など財源調達を含まないのであれば、先に述べた超過量方式としたり、収入額に応じた減税も含めて市民への還元策を考える必要があるでしょう。ただし、徴収した税額の比率で減税をするとすると、相対的に低所得者に不利になる可能性もありますから、還元策のあり方についても慎重に検討する必要があると思われます。
ごみ有料化についてのまとまった文献レビューや特集、著書などはいくつか出ています。このサイトでも、ごみ有料化に関する主な書籍・文献レビュー・特集などを紹介しています。私自身もこれまでに2度、共著でレビューを出しています。
1996年のレビューは家庭系可燃ごみ・不燃ごみのごみ減量効果に関する議論を中心としています。2001年の方は、費用負担についての議論を始め、いくつかの論点について充実させるとともに、範囲も粗大ごみ、事業系ごみに拡げて整理しました。ただし、粗大ごみ、事業系ごみについてはあまり文献が見つからず、それほどボリュームはありません。
そのほか、大阪府廃棄物減量化・リサイクル推進会議(現在、大阪府リサイクル社会推進会議)の報告書や山川の学位論文など、山川の関係した研究成果が、このサイトの論文・著書等一覧のページにありますので、ご参照いただければ幸いです。abstructや本文がインターネット上で読めるものには、リンクが貼ってあります。
2005年2月に中央環境審議会から「循環型社会の形成に向けた市町村による一般廃棄物処理の在り方について(意見具申)」(PDF)が出され、翌年、廃棄物処理法の基本方針(PDF)が改正されました。基本方針には、従来からごみ有料化を推進する文言が入っていましたが、さらにこれを強化した表現となりました。
意見具申が出されるまでの報告と議論は、以下の会議の記録にあります。「議事要旨・資料」の方から、そのときの配布資料もダウンロードできます。専門のワーキング等を作っていませんので、議論は飛び飛びになっています。なお( )内は、意見を聞くために呼ばれた方・団体です。
意見具申では、循環型社会構築のために、以下のような取組みが必要で、必要に応じて、廃棄物処理の基本方針でその方向性を示すべきとしています。
(1)循環型社会を目指すための基本施策の充実
(2)発生抑制・再使用の推進
(3)循環的利用の推進
(4)適正な処分の推進
このうちの(2)の中で、市町村や民間団体の発生抑制・再使用の取組の支援、経済的手法(ごみ有料化)の導入による減量化の推進(同時に、負担の公平化、意識改革を推進)が示され、国が方向性を明確に示した上で、地域の実情を踏まえつつ、ごみ有料化の導入を推進すべきという意見が示されました。
意見具申の中では、ごみ有料化が発生抑制に有効であるとし、料金設定のあり方、留意事項等についても書かれています。そして、国はこれらの留意事項に関する考え方、検討の進め方、これまでの知見等について、ガイドラインを取りまとめることにより、ごみ有料化を行う市町村の取組を支援していくことが望まれる、とし、さらに行政サービスの経費の一部を、租税ではなく、手数料により負担していくものであることから、その分担のあり方等について、今後検討していくべき、としました。
この上記の意見を受けて、環境省は「廃棄物会計基準・廃棄物有料化ガイドライン策定検討委員会」を立ち上げ、2005年度、2006年度の2年間検討を進めてきています。初年度の報告書は、以下にあります。
また、2007年6月にその成果物がでました。成果物は以下からダウンロードできます。
本書は、現時点のごみ有料化に関する実態をまとめ、分析した本で、これからごみ有料化について考える人にとって必読の書だと思います。
筆者は、有料化する際に検討すべき課題をまとめるとともに、最新の調査・研究結果に基づいて、各課題に関連する実態や先進的な事例、また分析結果を紹介しています。例えば、制度設計や併用施策の実態とその影響、手数料金額の設定方法や手数料収入の使途の状況、ごみ減量効果とリバウンド、併用施策のリバウンド防止効果、さらに不法投棄・不適正排出の状況と対策、事業系ごみ対策などについて論じられています。特に、法的根拠に関する環境省の最近の見解の整理や、不適正排出対策・事業系ごみ対策・戸別収集導入などについては、他にあまり見られない充実した記述がされていて、参考になります。
ただしごみ減量効果とリバウンドに関する分析については、私とはやや分析結果・意見が異なります。この点については、リバウンドをどう捉えているかを踏まえて、注意深く読んでいただければと思います。
また山谷氏は、その前にも『実践・家庭ごみ有料化―制度設計と合意形成プロセス』という本も書かれています。この書籍は、より事例の記述を中心とした本で、多数の事例について、制度特性や経緯、減量効果など、それぞれテーマを持って調査・報告しています。また2005年調査の結果を踏まえ、ごみ有料化実施都市における導入年と料金についての一覧表を掲載しています。 その後,さらに『ごみ見える化―有料化で推進するごみ減量』も書かれています。
なお山谷氏の調査結果は、書籍に含まれていないものも含めて、月刊廃棄物の2005年7月号〜2006年10月号まで「最新・家庭ごみ有料化事情」として15回連載されています。またその後、2008年から2009年にかけての月刊廃棄物でも連載されています。
また山谷氏らは、2000年にも全市に対するごみ有料化の調査を行い、当時の都市のごみ有料化の実施状況を明らかにしています。その報告は、データベース(CiNii)で検索した範囲では、以下の文献に掲載されているようです。
なお、山谷氏のホームページの「自治体アンケート」には、2000年以降の自治体調査に基づく、自治体別のごみ有料化の実態情報が掲載されています。
ごみ有料化に対して肯定的な議論が多い中で、本書では、ごみ問題、有料制を問い直すとともに、ごみ有料化の減量効果が本当にあったといえるのか、批判的に検証しています。
全国都市清掃会議では、環境省からの委託を受けて、ごみ有料化に関する全国調査を行いました。こちらは、町村もある程度カバーしています。その結果は『ごみ処理の有料化に係る調査』(2003)という報告書にまとめられ、その概要は都市清掃の2004年1月号にも掲載されています。
また同じ時期、都市清掃の2003年11月号、2004年1月号の2回にわたって、ごみ有料化の特集が組まれています。コストの問題、市民の意見なども含めて幅広い範囲をカバーしています。
さらに2008年11月号では、その後の有料化の広がりを受けて、新たな特集が企画されています。上記で挙げた手引きの紹介のほか、有料化の歴史、評価、併用施策との関係、合意形成の問題についての論考が掲載されるとともに、いくつかの導入事例が報告されています。
東京市町村自治調査会では、ごみ有料化に関する包括的な検討を行い、2000年に導入ガイドをまとめました(下記の循環社会研究所(2000)の報告書がオリジナル)。前半はごみ有料化の評価・分析報告、後半は、自治体が導入する際に検討すべき手順について示したマニュアルとなっています。出版された方を私は持っていないので正確にはわかりませんが、少し見た際には、ほぼ同じ内容だと思いました。手数料を上乗せする指定袋の流通方式についての検討が特徴的です。オリジナルの報告書にはLOGITモデルを用いた分別徹底に対する料金の影響の分析も含まれています。
この報告書は、以前はネットからダウンロードできたのですが、現在は、日報出版から出版されています。また、月刊廃棄物の2000年8月号にも、ガイド部分の概要が掲載されています。
丸尾氏が高山市、守山市、与野市の事例について、実証的な分析を行い、問題点と対応政策について検討しています。
一方、落合氏は、ごみ有料化の意義、理論的根拠、制度特性などの整理を行った上で、1990年度の兵庫県を除く市のデータに基づいて実証的な分析を行っています。落合氏のごみ有料化タイプの分類は、その後もしばしば利用されています。落合(1996)もほぼ同内容の報告ですが、こちらが落合氏の研究報告としてはオリジナルのようです。
ごみ有料化の経済学理論をWertz(1976)の説明に基づき解説した上で、実証研究を踏まえて課題を抽出しています。
また『廃棄物とリサイクルの経済学』では、ごみ処理サービスの性質を、収集・中間処理・最終処分に分けて検討した上で、ごみ有料化のあり方について検討しています。またその可能性と限界、導入時の留意点などについて検討しています。
北大の研究グループは、1993年の報告で北海道内のごみ有料化について報告、その後、毎年報告書を出して、最終的に1996年にまとめています。
1993年の報告書では、伊達市の質問紙調査、北海道数自治体のごみ量の分析などを行っています。1993年以降は、さらに全国のごみ有料化自治体に調査対象を広げて、10市以上の住民に質問紙調査を行い、ごみ有料化自治体におけるごみ減量行動の実態、および、ごみフローの解析を行っています。また、ごみ有料化未実施都市の調査も行い、ごみ有料化を実施した場合の予測も行っています。
なお報告書は入手するのが困難と思われるので、1996年報告書に記載の学会発表等についても掲載しました。
米国のごみ有料化に関する文献を中心としてレビューした論文。制度特性の整理、減量効果等、日本で議論されていることと類似の論点が挙げられて、検討されています。私もレビューを書く際には、かなり参考にしました。
米国EPAのごみ有料化の情報サイトのArticles & Researchの中に含まれていて、そこからダウンロードも可能です。
またMiranda氏は、このレビュー以外にも多数のごみ有料化に関する論文を書いています。これらのうちのいくつかについても、上述のArticles & Researchからダウンロードできます。
2人の著者が、一緒に、あるいは別々に発表してきた、家庭ごみとリサイクルに関する理論的、実証的分析に基づく論文を集めた書籍です。実は、まだすべては読めてはいませんが、これまでに読んだ論文は、なかなか興味深いものでした。
ごみの排出、リサイクル、不法投棄に関する一般均衡モデルを構築して、理論的分析を行う論文(Fullerton & Kinnaman,1995)や、世帯単位のデータを集めて実証分析を行った論文(Fullerton & Kinnaman,1996)は、ごみ有料化に関する研究です。また、リサイクラビリティ等の製品の品質を考慮する一般均衡モデルを構築して、EPR政策の理論的根拠を検討する論文(Fullerton & Wu, 1998)においても、また先のFullerton & Kinnaman(1995)においても、上流政策と下流政策とどちらが望ましいのか、どういうときにどちらかが望ましいのか等の理論的検討を行っています。これらの論文のほか、Fullerton氏の主要な論文のWorking Paper等が、Fullerton氏のホームページからダウンロードできます。
神戸大学の石川氏と竹内氏の訳が出版されています。経済学の基礎理論に基づいて、後払いのごみ有料化と前払いのごみ有料化(ADF)、デポジット・リファンドなどを、いろいろな条件の下で比較しています。不法投棄がない場合、ある場合、リサイクルがない場合、ある場合と、次第に条件を複雑にしながら、理論的に検討し、わかりやすく解説しています。なおADFとの比較という意味からは、EPR政策とごみ有料化との比較という側面も持っています。
家庭系と事業系のごみ量をあわせて要因分析しています。その中で料金も要因として分析しているものです。9自治体の月単位の時系列データを用いて、GLSにより分析しています。ごみ量に対する要因分析のレビューもあります。
なお、上記の分析で用いたデータにさらにデータを追加して同様に分析した結果が「Green Fees : How a Tax Shift Can Work for the Environment and the Economy」という書籍に掲載されています。この本は邦訳されて『緑の料金―税制変更によってどれほどの環境と経済に影響を与えられるか』というタイトルで出版されています。
これはマニアックですが、大変興味深いので紹介しておきます。昭和9年(ほぼ同じ内容で微妙に異なるものが、昭和10年にも出ていて、一つになっています)の報告書なのですが(大阪市立図書館に所蔵されています)、ごみ有料化に関するかなりの検討が行われています。当時は、法律上、基本的には家庭ごみ収集に対して手数料を取ることができませんでした。そこで、大都市が中心となって、国に手数料を徴収できるように陳情を繰り返していました。その頃の報告書で、定額制が主な検討対象だったにもかかわらず、不法投棄やごみ減量効果、また料金徴収の根拠論等について包括的に検討しています。さらに、ヨーロッパやアメリカの事例についても紹介し、ごみ有料化を行っても問題がないことを主張しています。戦前の、まだごみ有料化制度が基本的にはない頃から、すでに現在のごみ有料化の論点がかなり出ています。