ごみ有料化に関する文献レビューや書籍、特集などの紹介をしています。海外の文献や日本の昭和初期の文献の紹介もあります。 ごみ有料化に関する記事の目次 |
この書籍では、ごみ有料化の実施状況、リバウンドの状況について全国調査の結果に基づき報告するとともに、多数の事例について、制度特性や経緯、減量効果など、それぞれテーマを持って調査・報告しています。また2005年調査の結果を踏まえ、ごみ有料化実施都市における導入年と料金についての一覧表を掲載しています。
なお山谷氏の調査結果は、書籍に含まれていないものも含めて、月刊廃棄物の2005年7月号〜2006年10月号まで「最新・家庭ごみ有料化事情」として15回連載されています。
また山谷氏らは、2000年にも全市に対するごみ有料化の調査を行い、当時の都市のごみ有料化の実施状況を明らかにしています。その報告は、データベース(CiNii)で検索した範囲では、以下の文献に掲載されているようです。
なお、山谷氏のホームページの「自治体アンケート」には、2000年以降の自治体調査に基づく、自治体別のごみ有料化の実態情報が掲載されています。
ごみ有料化に対して肯定的な議論が多い中で、本書では、ごみ問題、有料制を問い直すとともに、ごみ有料化の減量効果が本当にあったといえるのか、批判的に検証しています。
全国都市清掃会議では、環境省からの委託を受けて、ごみ有料化に関する全国調査を行いました。こちらは、町村もある程度カバーしています。その結果は『ごみ処理の有料化に係る調査』(2003)という報告書にまとめられ、その概要は都市清掃の2004年1月号にも掲載されています。
また同じ時期、都市清掃の2003年11月号、2004年1月号の2回にわたって、ごみ有料化の特集が組まれています。コストの問題、市民の意見なども含めて幅広い範囲をカバーしています。
東京市町村自治調査会では、ごみ有料化に関する包括的な検討を行い、2000年に導入ガイドをまとめました(下記の循環社会研究所(2000)の報告書がオリジナル)。前半はごみ有料化の評価・分析報告、後半は、自治体が導入する際に検討すべき手順について示したマニュアルとなっています。出版された方を私は持っていないので正確にはわかりませんが、少し見た際には、ほぼ同じ内容だと思いました。手数料を上乗せする指定袋の流通方式についての検討が特徴的です。オリジナルの報告書にはLOGITモデルを用いた分別徹底に対する料金の影響の分析も含まれています。
この報告書は、以前はネットからダウンロードできたのですが、現在は、日報出版から出版されています。また、月刊廃棄物の2000年8月号にも、ガイド部分の概要が掲載されています。
丸尾氏が高山市、守山市、与野市の事例について、実証的な分析を行い、問題点と対応政策について検討しています。
一方、落合氏は、ごみ有料化の意義、理論的根拠、制度特性などの整理を行った上で、1990年度の兵庫県を除く市のデータに基づいて実証的な分析を行っています。落合氏のごみ有料化タイプの分類は、その後もしばしば利用されています。落合(1996)もほぼ同内容の報告ですが、こちらが落合氏の研究報告としてはオリジナルのようです。
ごみ有料化の経済学理論をWertz(1976)の説明に基づき解説した上で、実証研究を踏まえて課題を抽出しています。
また『廃棄物とリサイクルの経済学』では、ごみ処理サービスの性質を、収集・中間処理・最終処分に分けて検討した上で、ごみ有料化のあり方について検討しています。またその可能性と限界、導入時の留意点などについて検討しています。
北大の研究グループは、1993年の報告で北海道内のごみ有料化について報告、その後、毎年報告書を出して、最終的に1996年にまとめています。
1993年の報告書では、伊達市の質問紙調査、北海道数自治体のごみ量の分析などを行っています。1993年以降は、さらに全国のごみ有料化自治体に調査対象を広げて、10市以上の住民に質問紙調査を行い、ごみ有料化自治体におけるごみ減量行動の実態、および、ごみフローの解析を行っています。また、ごみ有料化未実施都市の調査も行い、ごみ有料化を実施した場合の予測も行っています。
なお報告書は入手するのが困難と思われるので、1996年報告書に記載の学会発表等についても掲載しました。
米国のごみ有料化に関する文献を中心としてレビューした論文。制度特性の整理、減量効果等、日本で議論されていることと類似の論点が挙げられて、検討されています。私もレビューを書く際には、かなり参考にしました。
米国EPAのごみ有料化の情報サイト(ごみ有料化リンク参照)の文献のリストの中に含まれていて、そこからダウンロードも可能です。
またMiranda氏は、このレビュー以外にも多数のごみ有料化に関する論文を書いています。これらのうちのいくつかについても、上述の文献リストからダウンロードできます。
2人の著者が、一緒に、あるいは別々に発表してきた、家庭ごみとリサイクルに関する理論的、実証的分析に基づく論文を集めた書籍です。実は、まだすべては読めてはいませんが、これまでに読んだ論文は、なかなか興味深いものでした。
ごみの排出、リサイクル、不法投棄に関する一般均衡モデルを構築して、理論的分析を行う論文(Fullerton & Kinnaman,1995)や、世帯単位のデータを集めて実証分析を行った論文(Fullerton & Kinnaman,1996)は、ごみ有料化に関する研究です。また、リサイクラビリティ等の製品の品質を考慮する一般均衡モデルを構築して、EPR政策の理論的根拠を検討する論文(Fullerton & Wu, 1998)においても、また先のFullerton & Kinnaman(1995)においても、上流政策と下流政策とどちらが望ましいのか、どういうときにどちらかが望ましいのか等の理論的検討を行っています。これらの論文のほか、Fullerton氏の主要な論文のWorking Paper等が、Fullerton氏のホームページからダウンロードできます。
神戸大学の石川氏と竹内氏の訳が出版されています。経済学の基礎理論に基づいて、後払いのごみ有料化と前払いのごみ有料化(ADF)、デポジット・リファンドなどを、いろいろな条件の下で比較しています。不法投棄がない場合、ある場合、リサイクルがない場合、ある場合と、次第に条件を複雑にしながら、理論的に検討し、わかりやすく解説しています。なおADFとの比較という意味からは、EPR政策とごみ有料化との比較という側面も持っています。
家庭系と事業系のごみ量をあわせて要因分析しています。その中で料金も要因として分析しているものです。9自治体の月単位の時系列データを用いて、GLSにより分析しています。ごみ量に対する要因分析のレビューもあります。
なお、上記の分析で用いたデータにさらにデータを追加して同様に分析した結果が「Green Fees : How a Tax Shift Can Work for the Environment and the Economy」という書籍に掲載されています。この本は邦訳されて『緑の料金―税制変更によってどれほどの環境と経済に影響を与えられるか』というタイトルで出版されています。
これはマニアックですが、大変興味深いので紹介しておきます。昭和9年(ほぼ同じ内容で微妙に異なるものが、昭和10年にも出ていて、一つになっています)の報告書なのですが(大阪市立図書館に所蔵されています)、ごみ有料化に関するかなりの検討が行われています。当時は、法律上、基本的には家庭ごみ収集に対して手数料を取ることができませんでした。そこで、大都市が中心となって、国に手数料を徴収できるように陳情を繰り返していました。その頃の報告書で、定額制が主な検討対象だったにもかかわらず、不法投棄やごみ減量効果、また料金徴収の根拠論等について包括的に検討しています。さらに、ヨーロッパやアメリカの事例についても紹介し、ごみ有料化を行っても問題がないことを主張しています。戦前の、まだごみ有料化制度が基本的にはない頃から、すでに現在のごみ有料化の論点がかなり出ています。